2016 Fiscal Year Annual Research Report
折りたたみの細胞シートから構築される昆虫外骨格の3D形態
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
15H05862
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大澤 志津江 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (80515065)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 折り畳み / 成虫原基 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫が示す様々な外部形態は、「上皮シートの折り畳み構造」である成虫原基が3次元的に伸展して作られる。原基の伸展は非常に速く、その間、細胞の増殖・移動がほとんど起らないことから、成虫の外部構造は折り畳まれた状態でほぼ完成していると推察される。しかし、その場合、「外部構造を折り畳んだ状態で作る」という驚異的な現象が起こっていることになるが、折りたたんだ状態から特定の外部形態を作るロジックは分かっていない。本年度は、ショウジョウバエ肢原基の折り畳みの形成パターンを詳細に観察した。その過程で興味深いことに、肢原基のうち、折り畳みを形成する上皮層(Disc Proper)は、まだ折り畳みを形成しない発生の初期段階においては、それと対面する上皮層(Peripodial Membrane)の細胞と突起様構造で接着していること、また、この接着が折り畳みを形成していく過程で失われていくことが分かってきた。この観察結果は、成虫原基の折り畳みは、Peripodial Membraneによるスペース上の制約を受けた状況下で、上皮組織が陥入する形で形成される可能性を示唆している。一方で本年度から、肢原基の折り畳み構造を形成する細胞のダイナミクスを明らかにするため、imarisソフトウェアを用いた細胞の3D構築構築によって細胞の高さ・体積の計測を開始した。また、細胞の分裂方向の解析を、中心体のマーカーであるg-tubulinおよび細胞周期のM期マーカーであるリン酸化ヒストンH3に対する抗体を用いた免疫染色により開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、成虫原基の折り畳みが、上皮組織が陥入する形で形成される可能性を見いだした。また昨年度までに、成虫原基を特定の折り畳み構造として維持する上で、Type IV Collagenが重要な役割を果たす可能性を見いだしている。これらの事実は、細胞外マトリックスが陥入構造を制御するという新しい概念を提唱し得る可能性を秘めていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
肢原基の折り畳み構造を形成する際の細胞のダイナミクスを、特に細胞増殖や細胞の高さの変化に着目して解析し、「3D構造を折り畳んで形成するロジック」に対する数理モデルの構築を、井上康博博士(京都大学・准教授)および秋山正和博士(北海道大学・助教)との共同研究により進展させる。
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Research Products
(4 results)