2018 Fiscal Year Annual Research Report
折りたたみの細胞シートから構築される昆虫外骨格の3D形態
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
15H05862
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大澤 志津江 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (80515065)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 折りたたみ / 形態形成 / Type IV コラーゲン / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
幼虫期の組織であるショウジョウバエ成虫原基は、折り畳まれた上皮層(Disc Proper; DP)と、それを覆う上皮層(Peripodial Membrane; PM)から構成される袋状の構造を示す。興味深いことに、変態ホルモンであるエクダイソンが成虫原基に作用すると、折り畳まれたDisc Properが3次元的に展開するとともに、PMが脱離し、最終的にはDisc Properのみから構成される特定の外部形態が形作られる。我々は前年度までに、成虫原基から外部形態へと変形する仕組みを明らかにするため、その変形過程を制御する遺伝子群を同定するRNAiスクリーニングを、翅原基をモデル系として行った。その結果、(1)エクダイソンの初期応答遺伝子である核内受容体E75がPMの脱離を制御すること、(2)PMの脱離には、Matrix Metallopriteinase (Mmp)が重要な役割を果たしていること、さらには(3)E75を成虫原基のPMで強制発現させると、Mmpの発現が誘導されること を見いだした。E75がPMで機能することでType IVコラーゲンが分解されることから、細胞外マトリックスの分解がPMの脱離に重要な役割を果たしていると考えられた。本年度は、DPの折り畳み構造を構築するメカニズムの解析にも着手した。まず、遺伝学的操作が容易な翅原基をモデルとし、翅原基の進展過程を詳細に観察した結果、興味深いことにPMと同様にType IVコラーゲンが進展の過程で分解されることを見いだした。また、器官培養において翅原基をコラゲナーゼで処理する、あるいは、Type IV コラーゲンの発現を遺伝学的に抑制する翅形態への変形を開始することが分かってきた。これらの結果は、DPを折り畳んだ状態に維持する上でType IVコラーゲンが重要な役割を果たし、その分解により翅形態への展開が引き起こされることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Type IVコラーゲンの発現を遺伝学的に抑制する系を構築し、翅原基への影響を解析した。その結果、器官培養において翅原基をコラゲナーゼで処理したときと同様に、翅原基のDPが展開を開始することが明らかとなった。このことは、翅原基が幼虫期に成長していく過程において、Type IVコラーゲンが折り畳んだ状態で維持していること、およびこのType IVコラーゲンによる折り畳みを解除することで、翅形態へと展開することを示唆している。本研究結果は、細胞外マトリックスが上皮の折り畳み構造を規定するという新しい概念を提示し得る。
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Strategy for Future Research Activity |
折り畳み構造から特定形態へと展開する過程においてType IVコラーゲンの分解を制御する機構を、RNAiスクリーニングをはじめとした遺伝学的解析により明らかにする。また、Tyepe IVコラーゲンと力学制御の関係を明らかにするために、展開前後におけるミオシンの活性化パターンを詳細に観察する。一方で、共同研究者である井上康博博士と共同で、成虫原基を特定パターンに折り畳むロジックについて、数理モデルの構築と遺伝学的手法により解析を進める。これらの結果を統合することで、折りたたみ構造から特定形態へと変形するメカニズムの理解に迫る。
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Research Products
(10 results)