2017 Fiscal Year Annual Research Report
Neural mechanism of affective response with Shitsukan perception
Project Area | Understanding human recognition of material properties for innovation in SHITSUKAN science and technology |
Project/Area Number |
15H05917
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
南本 敬史 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, チームリーダー(定常) (50506813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 学 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 部長 (40321608)
鯉田 孝和 豊橋技術科学大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10455222)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 価値判断 / サル / DREADDs / 質感 / エンリッチメント |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚に基づく価値判断のメカニズム解明のため、報酬量課題遂行中のサルの吻内側尾状核と腹側淡蒼球から神経活動記録を行い、いずれも予測される報酬量に直線的に神経活動を増やす、あるいは減らす価値表現を示すニューロンが見出された。感性的質感認知の神経回路基盤の解明に向け、価値判断・情動に関与が示唆されている前頭眼窩野(OFC)に着目し、化学遺伝学操作によりマカクザルのOFCを不活化したところ、顕著性の高い音声(叫び声)に対する選択的な自律神経性の情動反応が減弱するとともに、OFCをはじめとする複数の領域における賦活が減弱することをfMRI計測により見出した。この結果は、聴覚による情動惹起において、OFCが必須であることを示唆する。また、視覚による情動惹起の神経機構を調べるため、ECoG電極を用いた情動性視覚刺激を提示した際の脳活動計測を開始した。 また、感性的質感認知と環境情報の<エンリッチメント>の関連について、音響環境が短期的な音声呈示がオスマウスの行動量や情動行動、社会行動に及ぼす影響を調べるため、複数の行動テストを異なる音響環境下で実施し、豊かな音響環境は短期的であってもマウスの行動量を増大させる可能性がある知見を得た。 さらに、取り巻く環境の明るさが及ぼす情動的作用の神経基盤の解明を目指し、明るさ感の神経基盤に関する研究と、白色境界線がもたらす色対比の増強現象、ならびに透明物体の厚みが潰れて誤認識される現象について調べるとともに、神経活動記録に用いる微小金属電極の記録位置を高精度にマーキングする手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚に基づく価値判断の神経回路の特定と神経表現の解析が順調に進んでいる。また、サル情動評価系の構築や脳計測の準備も並行して進めており、情動惹起の神経回路の探索も着手できた。加えて、情動反応形成に重要な質感刺激属性の特定については、聴覚における環境情報の複雑性と実験動物の寿命などとの関連を見出すとともに、視覚における明るさの選好性の脳メカニズムを示唆する、明暗の非対称な情報処理の一端が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)感性的質感認知における情動・感性系の神経回路の特定と操作 強い情動反応を惹起する視覚・聴覚刺激に対するサルの情動性反応を計測するとともに、fMRIやECoG法による脳活動計測を進める。脳活動-情動反応がOFCなど情動・価値判断に重要な領域の神経活動を化学遺伝学手法より操作することで、どのような影響が生じるかを特定することで、感性的質感認知における情動・感性系の神経回路とその仕組みの理解につなげる。 (2)特定情動反応に影響を与える質感属性の同定と、その神経系への作用機序 上記で用いる具体的な感性的質感情報として超高周波によって音の質感が向上する〈ハイパーソニック・エフェクト〉に着目する。様々な音響信号(自然環境音、超音波発声、ホワイトノイズなど)をマウスに呈示して各種行動バッテリーを実施し、音響環境情報が行動に及ぼす影響を明らかにする。またH31年度には、特定の神経系の活動を低下させたモデルマウスを用いて、音響環境情報と行動との関係がどのように変容するかを観察し、質感情報が行動に結びつく脳内メカニズムを明らかにする予定であるが、それに向けた準備とパイロット実験を実施する。 (3)画像の視覚的注意と情動・感性へ寄与する要因の特定 サルとヒトで共通の選好性を示す視覚刺激として、高輝度・高コントラスト刺激に着目する。画像を呈示した際の選好性判断とともに、瞳孔系の変化を測定することで不随意応答を測定する。瞳孔経には光に対する対光反射と、観察者の関心度が足し合わされている。対光反射の神経核である被蓋前域、さらに視交叉上核、外側膝状体、上丘からニューロン活動記録を行い、自立応答特性と認知に基づく効果を切り分ける。ニューロン活動計測の際には新規開発した精密な電極位置マーキング手法を導入し、小さな神経核からの計測を確認するとともに手法を洗練させる。
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Research Products
(17 results)