2015 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋の発達・維持・萎縮における負荷依存性の分子基盤の理解
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
15H05938
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬原 淳子 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (60209038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 文規 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定助教 (10588263)
飯田 敦夫 京都大学, 再生医科学研究所, 助教 (90437278)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | ゲノム / 再生医学 / 生体分子 / 細胞・組織 / 発生・分化 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュの宇宙滞在実験をもとに、微重力環境による筋萎縮のメカニズムを、運動抑制・加齢による筋萎縮と比較しながら検証し、筋萎縮/維持の新しい機構の解明を目指している。 運動抑制による筋萎縮は廃用性筋萎縮と考えられており、プロテアソーム系の活性化が既に知られている。今回のゼブラフィッシュ運動抑制においても多数のプロテアソーム関連遺伝子の発現増加が認められた。このことはゼブラフィッシュにおいても運動抑制によって廃用性筋萎縮が誘発されていることを示唆しており、ゼブラフィッシュが筋萎縮研究のモデル動物として有用であることを示すことができた。 一方、加齢に関しては運動抑制と同様にいくつかのプロテアソーム関連遺伝子の発現増加が認められたが、運動抑制では変化が認められなかった遺伝子に関しても多数発現量が変化した遺伝子が確認された。これらの遺伝子の中には筋萎縮性疾患の原因遺伝子も含まれており、新規の加齢による筋萎縮メカニズムの解明の手がかりになると考える。 宇宙滞在実験に関しては、軌道上2日後、軌道上約1カ月後、初めて成功した地上帰還後のゼブラフィッシュを試料として用いトランスクリプトーム解析を行っている。軌道上約1カ月後の解析結果より、これまでの報告と同様の発現変動を示す遺伝子も確認されたが、逆の変動を示す遺伝子も多数確認されるなど、興味深い結果が得られている。また、経時的(地上→軌道上→地上)な遺伝子発現変動を解析することにより、宇宙滞在および地球帰還に対して早期に発現量が変化する遺伝子を同定することができた。これらの遺伝子の中には、既に筋萎縮との関連が報告されている遺伝子も含まれており、詳細な解析を進めるにあたり対象とする因子の選定に非常に有用なデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個体ごとに次世代シークエンスによるトランスクリプトームを行うことによって、良質なデータが得られており、研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトームデータをさらに精査し、それに基づいてより詳細な発現解析・パスウェー解析を行う。重要と思われる遺伝子を選択し、筋維持・萎縮における役割・機能を明らかにする。 また, JAXAの「フィージビリティースタディー」に採用され、今年度あるいは来年度にかけて、本研究費を用いて、宇宙実験の準備を行い、それを遂行できることとなった。 国際宇宙ステーション「きぼう」内の実験スペースが限られているため、この宇宙実験は稚魚に限定されているが、上記の遺伝子群の強力な解析手段として、このチャンスを最大限生かせるよう、実験を準備する予定である。特に、これまでの解析は成魚で行ってきたが、それを稚魚でどのように解析するか、またどのようなトランスジェニックフィッシュを作成するか、が当面の重要な検討課題となる。
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