2016 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋の発達・維持・萎縮における負荷依存性の分子基盤の理解
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
15H05938
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬原 淳子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (60209038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 文規 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 特定助教 (10588263)
内田 智子 一般財団法人日本宇宙フォーラム, 宇宙利用事業部, 研究員 (90724964)
白川 正輝 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 主幹研究開発員 (30624522)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 骨格筋萎縮 / 運動 / 再生 / 加齢 / メカニカルストレス / ゼブラフィッシュ / 宇宙 / 無重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮には力学的負荷の低下による可逆的なものと、加齢や疾病による不可逆なものが知られる。後者の不可逆性は、ユビキチン-プロテアソームによる筋タンパク質分解亢進等の筋萎縮に共通したパスウェイでは説明が出来ない。一方近年、筋幹細胞の減少や機能低下が不可逆的な筋萎縮をもたらすことが示された。このような研究の背景をふまえ、本研究は、ゼブラフィッシュを用いて、無重力による筋萎縮のメカニズムを問うとともに、それを廃用性筋萎縮や加齢による筋萎縮機構と比較し、その解析に基づく骨格筋萎縮の新規の制御機構の解明を目指してきた。 本年度はまず、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」に、ゼブラフィッシュを35日間滞在させることによって、微重力環境におかれることによりゼブラフィッシュの骨格筋が萎縮することを見出した。そして、宇宙滞在後2日後、35日後、地上帰還後2日目、30日目の RNAを骨格筋などから単離し、それらのトランスクリプトームを地上に棲むゼブラフィッシュをコントロールとして比較解析し、変動する遺伝子を調べた。さらに、運動抑制モデルとして麻酔薬トリカインで処理した魚のトランスクリプトームを行い、この運動抑制フィッシュと宇宙滞在フィッシュの遺伝子発現変化の共通性・差異を探ることによって、骨格筋萎縮に関わるあらたなパスウェイを見出すことに成功した(未発表)。 また、筋維持・萎縮の基盤として神経筋接合部の形成・維持・筋再生機構解明にも取り組んだ。神経筋接合部形成に関与する増殖因子活性化機構の解明(Kamezaki A et al., Sci. Rep., 2016)、神経細胞からメタロプロテアーゼ依存的に分泌される糖タンパク質の解析(Tsumagari K., et al., Genes to Cells, 2017)、損傷筋の再生時に起こる炎症反応の解析(投稿準備中)などの研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のように、骨格筋のトランスクリプトームを調べることにより、我々は筋萎縮につながるあらたなパスウェイを見出すことができた。成功の要因は第一に、宇宙滞在後2日、35日後、地上帰還後2日目、30日目、という時間経過を調べることによって、これまでよりも詳細な遺伝子変化を知り得たことにある。第二に、個体ごとのトランスクリプトームを行うことにより、多くの遺伝子に関して統計的に有意な差を捉えることができたところにある。第三に、運動抑制モデルとして麻酔薬トリカインで処理したゼブラフィッシュのトランスクリプトームを行い、それと比較することによって、変動遺伝子を分類することができたところにある。そして第四に、体幹の骨格筋だけでなく、他の臓器のトランスクリプトームも解析し、共通性と臓器特異性を評価したところにある。最後に、この変化が宇宙放射線で誘導される可能性も考慮に入れ、宇宙放射線を研究する計画研究A3の高橋(群馬大)や公募研究原田(京大)チームと共同で、ゼブラフィッシュにガンマ線を照射した際に変動する遺伝子との比較も行い、さらに分類の精度を高めたところにある。また、計画研究A2の森田(岐阜大)らの耳石-前庭核研究、 計画研究A1の細胞レベルや線虫をモデルとする成瀬・東谷の研究、メダカの宇宙実験を行った公募研究茶谷(昭和大)等、他の研究との情報交換・ディスカッションも、本研究の遺伝子パスウェイを調べる上で、きわめて重要な役割を果たした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、宇宙での骨格筋萎縮の新たなメカニズムを見出している。では、それらの遺伝子変化が宇宙滞在によってどのようにもたらされているか、メカニズムを知る必要がある。まず、それらの遺伝子変化が微重力によってもたらされるのかどうかを知るため、宇宙ステーションでゼブラフィッシュを遠心機にかけて1Gを達成し、微重力のままの個体と遺伝子変化を比較する予定である。この研究は、JAXAの「きぼう」の船内環境を利用する「フィージビリティースタディー」に採用され、本年度後半に宇宙実験を実施する予定である。また、運動抑制モデルとして麻酔薬トリカインで処理した魚においても変化が起こる遺伝子群に関しては、この実験系を用いることにより、どのようなメカニズムで遺伝子変化が起こるのか、地上実験として調べることが可能になった。一方、トリカイン処理では変化しない遺伝子群でも、興味ある遺伝子(群)がいくつか見られる事から、これらに関しては CRISPR-Cas9システムを用いて筋萎縮に関わるかどうかを検証する。 また筋萎縮メカニズムとの関連において、筋再生機構、神経筋接合部形成・維持の研究はますます重要性を増しており、それらの研究も引き続き行う。
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Research Products
(18 results)
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[Presentation] What Zebrafish Experienced on a Space Tour2017
Author(s)
Fuminori Sato, Choi Minyong, Zi Wang, Misato Iwase, Satoko Uchida, Toru Sakimura, Yasushi Kono, Masaki Shirakawa, Fumiaki Tanigaki, Masahiro Chatani, Akira Kudo, Akihisa Takahashi, Junya Kobayashi, Kiyomi Imamura, Terumi Horiuchi, Yutaka Suzuki, Sumio Sugano, Kawakami Koichi, and Atsuko Sehara-Fujisawa
Organizer
International Symposium on Living in Space 2017
Place of Presentation
東京都千代田区
Year and Date
2017-03-09 – 2017-03-09
Int'l Joint Research
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[Presentation] Roles of ADAM8 for skeletal muscle regeneration2016
Author(s)
Daigo Nishimura , Hiroshi Sakai , Takahiko Sato , Fuminori Sato , Satoshi Nishimura ,Noriko Toyama-Sorimachi , J.W. Bartsch , Atsuko Sehara-Fujisawa
Organizer
第24回マクロファージ分子細胞生物学会国際シンポジウム(MMCB2016)
Place of Presentation
東京都千代田区
Year and Date
2016-06-10 – 2016-06-10
Int'l Joint Research
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