2018 Fiscal Year Annual Research Report
Integrated understanding of plastic alteration of vestibular system and countermeasures for adaptive disorder
Project Area | "LIVING IN SPACE" - Integral Understanding of life-regulation mechanism from "SPACE" |
Project/Area Number |
15H05940
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
森田 啓之 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80145044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶 博史 近畿大学, 医学部, 教授 (90346255)
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
村谷 匡史 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50730199)
岩崎 真一 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10359606)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 前庭系 / 微小重力 / 過重力 / 糖・エネルギー代謝 / 自律神経 / 平衡機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
①重力変化に応答する遺伝子の役割:微小重力により耳石器で発現が低下したEnpepのKOマウスを作製したが,表現型として平衡機能障害等は見られなかった。 ②前庭系可塑的変化の中枢経路:重力環境変化で発現が変化した前庭神経核GABA受容体,グルタミン酸受容体の機能をphotogenetics,chemogenetics手法を用いて検討した。グルタミン酸受容体刺激では同側に,GABA受容体刺激では対側に体が傾いた。また,両側グルタミン酸受容体刺激では著明な深部体温低下がみられ,重力環境変化により引き起こされる平衡機能障害・深部体温低下に前庭神経核のこれらの受容体が関与していることが示唆された。 ③重力変化が筋・骨連関および代謝調節に及ぼす影響:高脂肪高ショ糖食誘導性の体重増加,脂肪量増加,血糖上昇,耐糖能異常は前庭破壊により有意に改善され,さらにβ阻害薬およびトレッドミル運動負荷によっても有意に改善された。これらより,前庭系は自律神経系と運動系を介して,食餌誘導性の肥満とそれに続く糖代謝異常に影響を及ぼす可能性が示唆された。 ④長期宇宙滞在により引き起こされる耳石前庭機能障害とその対策:長期宇宙滞在前後でcVEMP (球形嚢機能) とoVEMP (卵形嚢機能) 検査を実施し,帰還直後に球形嚢機能の著明な低下が起こり,閉眼起立時の重心動揺が大きくなることが分かった。また,noisy-GVSにより重心動揺の増大が抑制されることから,帰還後の平衡機能障害の対策としてのnoisy-GVSの有効性が示唆された。 ⑤経皮的noisy-GVSによる前庭系可塑性の誘導に基づくバランス障害改善効果の検討:二重盲検ランダム化プラセボ対照クロスオーバー試験(医師主導治験)を計画し,PMDAによる承認,IRB申請,治験計画届の提出を済ませ,平成31年2月より被験者の組み入れを開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度計画にあげた4つの動物実験,①重力変化に応答する遺伝子の役割,②前庭神経核に存在する神経細胞の役割,③重力変化が筋・骨連関および代謝調節へ及ぼす影響および前庭系が肥満による糖・エネルギー代謝異常におよぼす影響に関しては,予定通り実験終了し,論文執筆完了あるいは執筆中である。また,宇宙飛行士を被験者とする実験では,1名の宇宙飛行士の実験が終了,その他4名の宇宙飛行士の飛行前のデータを取得した。これら4名については31-32年度中に実験終了予定である。経皮的noisy-GVSによる前庭系可塑性の誘導に基づくバランス障害改善効果の検討に関しては,治験計画届を提出し,実験開始予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
遠心機による過重力環境および国際宇宙ステーションの微小重力環境で飼育したマウス,および宇宙飛行士,前庭機能障害患者を対象として以下の研究を行う。 ①月の重力に相当する0.17 g 飼育マウスの前庭機能解析,前庭系のエピゲノム解析,視床下部のFosマッピング,摂食関連ペプチド解析を実施する。 ②過重力によって抗重力筋であるヒラメ筋において発現が変化する因子として,網羅的遺伝子発現解析により抽出したOlfactomedin-1およびDkk2の骨と筋への作用とそのメカニズムの検討を,骨芽細胞,破骨細胞,筋細胞の表現型の分析により行う。さらに,Olfactomedin-1とDkk2の血中濃度と骨代謝および筋指標との関連を分析する。 ③過重力 (2 g) 飼育から地上重力 (1 g) に戻ったときのマウス脳内活性部位(Fosによるマッピング)を前庭破壊マウスと比較し,重力変化を感知する脳内部位および前庭入力の関与を明らかにする。同様の条件下でマウス脳内の視床下部摂食関連ペプチド遺伝子発現の変化を検討する。 ④前庭障害患者を対象にnoisy-GVSの刺激中および刺激終了後のバランス改善効果について検証するため,プラセボ対照の二重盲検クロスオーバー試験を実施する。 ⑤宇宙飛行士を被験者とした研究で,飛行前後の前庭系の機能を耳石系 (卵形嚢:oVEMP,球形嚢:cVEMP),半規管系 (caloric test) に分けて調べ,帰還直後に見られる平衡機能障害に対するnoisy-GVSの効果を検討する。
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Research Products
(25 results)