2018 Fiscal Year Annual Research Report
染色体高次構造情報の計算機的再構築および染色体構造と表現型の連関解析
Project Area | Chromosome Orchestration System |
Project/Area Number |
15H05979
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 武彦 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90501106)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
昆 彩奈 京都大学, 医学研究科, 助教 (20772403)
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Project Period (FY) |
2015-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | ゲノム情報 / 染色体構造 / 染色体動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続き、染色体OSプラットフォームの維持・改良に努めた。具体的には複数解析結果比較機能を充実させ、複数結果間の定量比較を可能にし、構造の差異を自動的に抽出する機能の搭載を実施した。情報解析においては班員との共同研究をさらに進め、4C, Hi-C, ChIP-seqデータなどの情報解析を進めた。具体的には、大阪大学深川グループと、4Cを用いたDT40セントロメア破壊株におけるZ染色体高次構造変化の解析を進めるとともにまた、医薬基盤研究所今井グループと、インフルエンザ感染マウスにおける染色体高次構造変化の解析をHi-C法を用いて進めた。 一方で、基盤となるゲノム配列決定アルゴリズムの開発も進め、Illumina, PacBio, 10X Genomicsといった複数プラットフォーム由来のシークエンスデータを扱えるアセンブラの開発を実施し、ニワトリ由来DT40細胞ゲノムの構築を行った。このプログラムを用いて新規に決定したDT40ゲノムを用いてDT40細胞由来のChIP-seq, Hi-Cデータの再解析を実施することにより、従来までは最近縁である赤色野鶏ゲノムを用いて解析をしていた結果とは異ったタンパク質の局在を示唆するデータなどが得られている。 また、STAG2変異とRUNX1変異の協調による癌化の分子メカニズムの解析も進め、ChIP-seqにより、Stag1およびStag2のゲノムへの結合領域は、エンハンサー領域、CTCF結合部位と共通する領域の2つにクラスタリングされ、前者においてSTAG2とRUNX1の結合部位が一致すること等を明らかにした。次に、ダブルノックアウト(DKO)マウスの解析を通じて、DKOマウスはHSPC分画の増加をもたらし、大部分が致死性のMDSを発症することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
期初に立てた研究計画の中で、染色体OSプラットフォームの機能強化に関しては、予定通り複数結果の定量比較を可能とし、構造の差異を抽出する機能の搭載を完了させた。しかしながら、可視化により複数結果を比較すると必ずしも抽出してほしいと思える差異が抽出できているわけではなく、特に大規模な構造変化と思われる箇所ほど抽出ができていないことが明らかとなってきた。このため、対角項から離れた箇所の扱いなどに留意したアルゴリズムの改良が必要であると考えられ、次年度この課題に取り組む予定である。また、DT40を用いたZ染色体高次構造変化解析などでは、論文化ができたなど一定の成果が出せたと思われる。同様にゲノム決定アルゴリズムにおいても当初の予定より時間をかなり要したものの既存手法と比べての優位性を示したアルゴリズムの完成・論文化を果たすことができ、本手法を用いたニワトリゲノム解析により、機能解析などへの発展の道筋もつけられたと考えられる。 一方で、STAG2変異とRUNX1変異の協調による癌化の分子メカニズムの解析も期初の予定に沿った形で進められており、ChIP-seqやダブルノックアウト(DKO)マウスの解析を行うことができた。これらを総合的に判断し、順調に推移しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる来年度においては、今年度までに構築してきた染色体OSプラットフォームのさらなる改良を試みると共に、班員から産出されたデータの格納データベースとしての機能の充実を行い、成果を外部に公開するための側面の充実も図り、最終的な完成を目指す。データ解析においてはまず大阪大学深川グループと共に、DT40細胞を用いたニワトリ染色体高次構造解析について、遠距離相互作用を効果的に抽出する手法を考案することにより、数Mb-数十Mbスケールでの染色体構造の違いを見出す手法の確立を目指すと共に、ネオセントロメア形成時の高次構造の変化を明らかにする。また、赤色野鶏とDT40細胞という極めて近縁のニワトリ由来ゲノム、ChIP-seqデータを扱うことにより、CENP-A局在箇所の違いをゲノム配列の違いと共に明らかにし、ゲノム内における進化速度の差を含めて局在化を明らかにする。 一方引き続き医薬基盤研究所今井グループと共に、インフルエンザ感染マウスにおける染色体高次構造変化の解析を行い、結果の取りまとめ・論文化を図る予定である。 また、STAG2変異とRUNX1変異の協調による癌化の分子メカニズムの解析も引き続き行い、こちらも結果の取りまとめ・論文化を図る予定である。
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Research Products
(3 results)