2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Structural and Functional Chemistry of Asymmetric Cluster Assemblies
Project Area | Coordination Asymmetry: Design of Asymmetric Coordination Sphere and Anisotropic Assembly for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
16H06514
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
阿部 正明 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (90260033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 邦久 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (00512807)
小野 利和 九州大学, 工学研究院, 助教 (20643513)
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Project Period (FY) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 多核錯体 / 結晶 / 二重発光 / 近赤外発光 / 混合原子価 / プロトン共役電子移動 / ルイス酸・塩基 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多核金属錯体およびそれらをモチーフとした多様な超分子構造体を結晶相ならびに異相界面へと集積化することにより、非対称場において特異的に発現する構造化学、レドックス・光・触媒化学、超高圧下での構造・物性化学を開拓することを目的としている。本年度は以下の成果を得た。 結晶相をはじめとする固相中で構築される非対称環境や外場に応答する多核金属錯体の機能開発と評価を行った。結晶相でフォトクロミズムを示すロジウム二核錯体の構造相転移のメカニズムと非線形応答性を共同研究者とともに見出した。ベンズイミダゾールチオール二座配位子とする銅(I)多核錯体においては、同一組成で異なる核数の化合物の結晶を作り分けることに成功し、それぞれ可視または近赤外部に固体二重発光性を示すことを見出した。今後の多重発光性を示す物質群の開発と学理構築、安価金属を用いた固体発光温度センサやセキュリティセンサへの展開が期待される。 分子レベルでの電子的な非対称性の制御として、外部刺激応答性を導入した新たな混合原子価錯体を開発した。トリアリールアミン二量体を混合原子価ユニットとし、ホウ素置換基を電子アクセプターとして利用した。光励起により、窒素中心からホウ素中心へ分子内電荷移動が進行し、電荷分離した混合原子価状態にアクセスできることを見出した。フェムト秒過渡吸収光スペクトルによって高速ダイナミクスを検討し、片方のトリアリールアミンがジアリールアミンに似た電子構造となり、基底状態よりも電荷分布が偏ることを明らかにした。ビフェロセンを混合原子価ユニットとし、ホウ素中心をルイス酸サイトとして利用した系では、よりハードなルイス塩基性ゲストアニオンとの結合に伴い、混合原子価を担う正電荷がクーロン引力によってより局在化することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多核錯体結晶の二重発光と近赤外発光、ならびに混合原子価錯体の電荷分布、プロトン共役電子移動、ルイス酸・塩基相互作用を主題とした研究成果を論文として報告できたため。またこれと並行し、研究プロジェクトの柱と位置付ける1)アシンメトリー界面における分子集積体の構造・機能チューニング、2)大環状多核クラスターの分子アシンメトリー化と集積アシンメトリー化に関する研究、3)多核錯体結晶の超高圧印加による構造アシンメトリー化と発光制御に関する研究も着実に進展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに成果が上がった項目について論文による成果報告を着実に行う。研究が進捗している研究テーマについては、以下の研究を加速させる。 1)アシンメトリー界面における分子集積体の構造・機能チューニング 昨年度までに共同研究者とともに、気水界面のアシンメトリックな空間を活用した多核錯体の分子集合体形成と集合体の構造・発光性におよぼすラテラルな加圧効果について知見を得てきた。今後はこの成果を論文として成果報告する。 2)大環状多核クラスターの分子アシンメトリー化と集積アシンメトリー化に関する研究:モジュール分子へのキラル源導入を検討し、キラル空間を創出する。金属核種、酸化数(原子価)、架橋配位子の長さ、結合角度、フレキシビリティー、さらに対アニオン、結晶溶媒、架橋金属種等の多様化に基づく系統的な合成探索を加速する。共同研究により、大環状クラスターを単結晶基板上にモノレイヤー配向させ、その場STM観察する。五角形構造を有する大環状ペンタマーを分子モジュールとすることでフラーレン型の巨大分子「多核フラーレン」の形成が期待されるので単離にチャレンジする。 3)多核錯体結晶の超高圧印加による構造アシンメトリー化と発光制御 発光性錯体結晶を対象とした超高圧下の発光ピエゾクロミズムの研究を 加速する。具体的には固体二重発光の圧力チューニングによる発光色制御ができる錯体の開発を目指す。新学術研究期間内での成果を総括し、未だ提唱されていない超高圧下における結晶内分子の歪み原理を提案する。
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Research Products
(10 results)