2021 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular Mechanism of Signal Transduction System Regulating Biometal Dynamics
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
19H05769
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石森 浩一郎 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20192487)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Keywords | 生命金属科学 / ヘム / アミノレブリン酸合成酵素 / ヘム制御モチーフ / 鉄制御蛋白質 / 鉄応答要素 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命金属科学研究基盤の確立に向けての研究 昨年度に引き続きヘム生合成の鍵酵素アミノレブリン酸合成酵素(ALAS1)の機能発現制御機構と、細胞内鉄代謝制御機構における鉄制御蛋白質(IRP)の機能制御機構について、以下の研究を行う。 1.細胞内鉄代謝制御機構におけるIRPの機能制御機構解析 細胞内鉄濃度恒常性は、鉄の細胞内への取り込みや鉄を貯蔵する蛋白質を翻訳段階で制御するIRPによって維持されている。本研究課題により、このIRPの翻訳機能を制御するシグナル伝達因子として、ヘムが同定されたが、その結合部位については、アミノ酸変異によって部位が異なることが示唆され、野生型におけるヘム結合部位については確定させることができていなかった。今年度は公募班の岐阜薬科大学の平山が開発したヘム修飾プローブを適用することで、IRPのホモログ蛋白質の一つであるIRP1におけるヘム結合部位が、これまでもそのヘム結合が示唆されていたヘム結合モチーフ部位であると決定することができた。 2.鉄応答転写因子Furの新たな機能とその生物学的意義 多くのバクテリアに存在している鉄応答性転写因子Furは、細胞内で利用できる鉄量に応じて鉄取り込みなどの鉄代謝に関する蛋白質の転写制御を行うことで、細胞内鉄恒常性を維持している。しかし、コレラ菌のFurは、ニッケル代謝に関連する蛋白質群をコードしているnikオペロンを制御していることが見出され、その転写機能について、精製蛋白質を用いて検討したところ、ニッケルではなく鉄によって標的DNA配列であるFur boxへの結合が制御されることを見出した。さらに、このnikオペロンを構成する蛋白質の一つであるVC1098はヘムを結合し、その親和性はヘムを活性中心として結合する蛋白質に比べ低く、これまで未同定であったシトクロムc生合成におけるヘムシャペロンである可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における主な課題の一つであった野生型IRPにおけるヘムの結合部位については、アミノ酸変異によってヘム結合部位が変化することから、これまでの手法では同定には至らず、新たなヘム結合部位の同定手法の確立が必要であった。本領域の公募班員である岐阜薬科大学の平山は、細胞内のヘムの局在を追跡するヘム追跡蛍光プローブを開発したが、このプローブがヘム結合部位と特異的に結合する特性を生かして、ヘム修飾部位のみをプローブとして利用したところ、野生型IRP1において、そのヘム結合部位を決定することができた。このヘム結合部位の同定は、本研究課題にとって大きな進展であり、次年度以降に実施予定であるヘムの結合による蛋白質部分の構造変化追跡の基礎的な情報を与える。 一方、当初予定していたヘム生合成における律速段階を触媒するALAS1におけるヘム結合の構造的、機能的意義の解析は、マウス由来の酵素についてその精製手法にいくつか問題点が見いだされ、その解決に時間を要し、当初より遅れたものの確立させることができた。 また、ニッケル代謝関連遺伝子群nikオペロンを制御するFurのヘムによる制御機構については、当初、論文発表できるまでの進展は期待していなかったが、実験計画が予想以上に進行した。さらに、ニッケル代謝遺伝子群と想定されたnikオペロンを構成する蛋白質の一つが、代表的なヘム蛋白質であるシトクロムcの生合成におけるヘムシャペロンの可能性が示されるなど、予想以上の成果が得られたと考えられる。以上、2021年度は、当初予定していたALAS1については実験計画が遅れているものの、IRPについては領域内連携研究によって大きな進展がみられ、またFurについては予想していなかった興味深い結果が得られたことから、全体としては、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究成果から、IRP1におけるヘム結合部位については、親和性の高いヘム結合部位は同定された。一方、これまでの研究から親和性の低いヘム結合部位の存在が示唆されていることから、次年度以降はヘムやヘム修飾プローブの添加量を変化させてうえで、そのヘム結合部位について検討し、IRP1のヘム結合部位に関して十分な情報を得ることを予定している。また、本年度でこのヘム修飾プローブを用いたヘム結合部位同定法が確立されたので、次年度以降はさらに複雑なヘム結合挙動を示すIRP2についてもこの手法の応用によって野生型におけるヘム結合部位の同定とその機能的意義を明らかにする。 IRPにおけるヘム結合部位の同定の目途が立ったことから、コロナウイルス感染防止等で十分に行えなかった学外での連携研究のうち、IRPのヘム結合による蛋白質部分の構造変化をネイティブ質量分析やX線小角散乱などを用いて検討する。 ALAS1についてはマウス由来の酵素についてその精製手法が確立できたので、ヘム結合による構造変化を分光学的、生化学的手法を用いて検討を行う。 さらに、これまでコロナウイルス感染防止等で十分に検討できていない細胞内の鉄動態の追跡について、放射線医学総合研究所の武田との連携研究による量子ナノビームによるバイオ・ケミカルイメージングを用いた測定についても予備実験等を予定している
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[Journal Article] Conformational ensemble of a multidomain protein explored by Gd3+ electron paramagnetic resonance2021
Author(s)
Saio, T., Hiramatsu, S., Asada, M., Nakagawa, H., Shimizu, K., Kumeta, H., Nakamura, T., Ishimori, K.
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Journal Title
Biophys. J.
Volume: 120
Pages: 2943-2951
DOI
Peer Reviewed
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