2020 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring the Dynamism of Eurasian Domestic Animal Cultures through Zooarchaeology
Project Area | A New Archaeology Initiative to Elucidate the Formation Process of Chinese Civilization |
Project/Area Number |
20H05819
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菊地 大樹 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究センター, 客員研究員 (00612433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 准教授 (60452546)
丸山 真史 東海大学, 海洋学部, 准教授 (00566961)
新井 才二 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員 (40815099)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | 動物考古学 / 家畜 / 家禽 / 牧畜文化 / ユーラシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中国文明の形成に作用した中国新石器時代晩期の諸地方文化要素の融合(内的因子)と中央アジアで成立した牧畜文化の受容(外的因子)という二つの大きな歴史動態および、周辺地域への波及を動物考古学的研究から導き出すことで、新たなユーラシア家畜文化史の提示を目指す。コロナ禍により現地調査は制限されているものの、可能な範囲で実施しつつ、これまでの研究をまとめた成果発表や、アウトリーチ活動に取り組んだ。ウズベキスタン南部山岳地帯のカイナル・カマル岩陰遺跡では、紀元前六千年紀を境にヒツジ/ヤギの比率が急増するとともにウシが出現する現象を捉え、当該地域の牧畜導入時期を明らかにした。浙江省文物考古研究所との共同研究では、新石器時代長江下流域の田螺山遺跡より発見されたガチョウが、世界最古の家禽であることを明らかにし、その成果は米国科学アカデミー紀要に掲載され、Science誌にも取り上げられるなど、世界的な注目を集めた。また、最後の牧畜家畜として中国へ伝来したラクダについて、近年の新資料と共に導入過程を再検討し、第一波として、西周時代併行期に天山山脈一帯で利用が始まり、その後、春秋戦国時代の第二波に、河西回廊附近まで広域に普及していたことを明らかにした。このほか、奈良県磯城郡田原本町にて、弥生時代の唐古・鍵遺跡から出土した動物遺存体の調査を実施し、大陸の影響を受けた下顎骨懸架の習俗にかかわる資料として、イノシシ/ブタの性別、年齢構成について検討した。さらに、奈良県天理市の古墳時代から古代の布留遺跡から出土した動物遺存体の調査では、ウマを主体としながらも、ウシの利用も確認できるなど、朝鮮半島を経由して九州、本州に渡来した家畜である牛馬と王権との関りの一端が明らかにできた。こうした実践的な調査、研究に加え、今後の研究で必要となる現生動物の比較骨標本の拡充を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実践的な調査が制限されているものの、国内外の調査を進めることができ、中央アジアにおけるヒツジ/ヤギやウシといった牧畜家畜の導入過程、および大陸とのかかわりが深い、弥生時代と古墳時代の中核的な遺跡における動物利用について、実践的なデータの集積ができた。また、中央アジアから中国への牧畜文化を考えるうえでも注目されるラクダについて、時間・空間的な整理から導入過程から拡散の様相が明らかになった。また、中国文明形成前夜における最古の家禽を明らかにするなど、研究計画を調整しながら着実に成果を出せている。また、コロナ禍にありながらも、各機関と連携しながら積極的なアウトリーチ活動も実施できていることから、順調に計画研究は遂行されている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き国内外の研究機関とは継続的に連絡を取り合い、現地の情勢を見極めつつ実地調査を実施していく。特に、国内の布留遺跡調査については、資料の年代の詳細が明らかでない点に課題が残ることから、年代測定を実施する予定である。また、集積したデータの分析を進め、成果の公表にむけて準備を進めていく。海外調査については、現地機関と連携をとりながら、中央アジアや中国にて動物遺存体の分析研究を進展させる。そして、それらの成果を国内外の学会などで積極的に発表する。また、拡充を進めている現生動物の比較骨標本を活用するなど、アウトリーチ活動にも努めていく。
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Research Products
(38 results)