2020 Fiscal Year Annual Research Report
全身臓器の生理的・病理的免疫状態遷移の脳による検出機構
Project Area | Glia decoding: deciphering information critical for brain-body interactions |
Project/Area Number |
20H05899
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
和氣 弘明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90455220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足澤 悦子 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (00446262)
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Project Period (FY) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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Keywords | ミクログリア / 脳境界領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知機能・学習・情動などの高次脳機能に障害を呈する発達障害・精神疾患の病態を理解することは喫緊の課題である。近年発達した光学技術によってグリア細胞の新しい生理機能の理解が得られ、高次脳機能とその病態の理解にはグリア細胞は不可欠であるという共通認識が広がりつつある。本研究では本研究では中枢神経系免疫細胞であるミクログリアに着目し、そのシナプスや血管などの脳環境に対する生理機能を明らかにする。さらに遺伝的・環境要因によるミクログリア変容のメカニズム及びその結果として引き起こされる異常による病態を精神疾患と組み合わせて解き明かすことを目的とした。これまでミクログリアは全身炎症時に血管に集積することで、炎症初期にはタイトジャンクション関連分子を発現することで、血管内皮細胞と結合し、血液脳関門の透過性を保護すること、炎症後期にはアストロサイトの足突起を貪食することで血液脳関門を障害することを明らかにした。そこで、さらに体循環系の環境及び脳環境の相互作用を免疫系に着目して、検証するために硬膜及び側脳室脈絡叢に着目した。全身炎症においてはこれらのマクロファージおよびTリンパ球の挙動が変化し、脳内環境と連動することがわかった。そこで、この組織の中に含まれる免疫細胞成分特にTリンパ球の成分に着目して解析を進めている。また神経疾患であるアルツハイマー型認知機能障害や精神疾患である統合失調症などにおいても硬膜及び側脳室脈絡叢の変化さらに中枢神経系との相互作用の解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳境界領域のイメージングが進み、技術的な系の構築が順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
体循環―脳環境の境界領域における体循環系免疫細胞と脳免疫細胞の相互作用を生体イメージングで明らかにし、特異的な応答を引き起こす体循環系免疫細胞をシングルセルトランスクリプトームおよび蛍光活性化セルソーティング(FACS)で同定する(大阪大・石井との共同研究)。また、ミクログリアにカルシウム感受性蛍光タンパク質を発現したマウス(CX3CR1-Cre :: CAG-Flox-GCaMP6マウスおよびIba1-tTa:;TeTo-GCaMP6マウス:入手済み)を用いて、生体でこの同定した免疫細胞と相互作用する際のミクログリアの機能応答の変化を可視化する。そしてその機能応答変化したミクログリアのトランスクリプトームの変化を次世代シークエンス技術(RNA-seq)を用いて、細胞集団・シングルセルレベルで同定し、とくにシナプス・軸索に作用することが知られているP2Y12やMHC受容体などの分子に着目してその発現変動を検証する。さらに機能応答変化を起こしたミクログリアがシナプスおよび軸索活動をどのように修飾し、その修飾様式を変えるのかをシナプス活動もしくは軸索活動と同時にイメージングすることで明らかにするとともに分担者の足澤が電気生理学的に解析する。さらに神経細胞構造およびそれによる神経回路機能変化を検証する(東大・岡部との共同研究)。また臓器由来のエクソソームなどの信号がミクログリアに作用することによって全身臓器の情報をミクログリアが取得する経路を検証するために、蛍光発色したヒト患者由来のエクソソームをマウスの発達期に注入し、このエクソソームを取り込んだミクログリアの活動変化を可視化し、これによるトランスクリプトームの変化をRNA-seqを用いて網羅解析することによって明らかにする(東工大・星野との共同研究)。
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Research Products
(15 results)