2021 Fiscal Year Annual Research Report
根圏微生物との超個体化が覚醒させる植物の貧栄養適応機構
Project Area | Co-creation of plant adaptive traits via assembly of plant-microbe holobiont |
Project/Area Number |
21H05150
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
晝間 敬 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20714504)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 亮 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任講師 (30712294)
大森 良弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20398390)
|
Project Period (FY) |
2021-08-23 – 2024-03-31
|
Keywords | 超個体 / 根圏微生物 / 植物栄養 / 器官間コミュニケーション / トレードオフ打破 / シロイヌナズナ / 内生菌 / 病原菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、リン欠乏や窒素欠乏条件で植物生長を効率よく促すCt-細菌群の構築に向けて、植物が利用可能なリンかつ窒素が欠乏した土壌でアブラナ科植物などの植物種と共生する糸状菌・細菌群の網羅的な単離を行った。表面殺菌した植物種の組織から出現した1200株の糸状菌、440株の細菌を単離保存するとともに、その属名をそれぞれサンガーシークエンス法を用いて決定した。次に、アブラナ科植物を含む異なる植物で広く共通して同定された微生物にまず着目して、貧栄養条件下でのシロイヌナズナに対する接種試験を行ったところ、リンが枯渇した環境下で植物生長を促す有用菌を複数種得ることが出来た。さらには、リン栄養条件依存的に病原性を発揮する糸状菌および細菌も同定した。 続けて、すでに窒素枯渇条件下で植物生長を協調的に促すことを代表者が見いだしたCtと有用細菌群の集団による植物生長促進機構を理解する目的で、トランスクリプトーム解析を行った。その結果、Ctによる植物生長促進効果が発揮される際に誘導されるシロイヌナズナの遺伝子応答パターンがリン欠乏と窒素欠乏の環境間で大きく異なることを見いだした。さらに、Ctと細菌群を共接種した区ではそれぞれの単独接種と比較して植物の遺伝子応答パターンがさらに変化することを見いだした。 最後に、本研究で局所応答と全体応答を区別する目的で導入を試みているSplit-rootシステム(Tabata et al., Science 2014)を本微生物実験系に当てはめるための予備的実験を行った。予備実験の中で、リン欠乏時におけるCt共生時に特異的に誘導されるリン酸トランスポーター植物遺伝子がCtを接種していない側の根でも誘導されることを見いだした。植物は共生時に菌と直接相互作用する根だけでなく、離れた根にもシグナルを送りリン酸トランスポーター遺伝子を誘導していることが考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定した以上の糸状菌と細菌の単離保存が完了するだけでなく、その属名もしくは種名もサンガーシークエンス法にて同定できた。また、今後の研究に視する有用微生物を同定することができた。行ったトランスクリプトーム解析についても、実験がうまくいったことを示す結果を取得することができた。Split-rootシステムの実験系からも、これまで予想していなかった知見がこれから生まれることを示唆する予備的結果を取得できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
リン欠乏や窒素欠乏条件で植物生長を効率よく促すCt-細菌群の構築を目指すと共に個々のユニークな植物生長促進効果を示す微生物の解析(感染様式調査・ゲノム解析・トランスクリプトーム解析などのオミックス解析)を進めていく。すでに取得しているトランスクリプトームデータからCtー細菌群による植物生長促進に必要な植物・Ct遺伝子候補を絞り込むと共に、細菌の感染中の遺伝子発現変動パターンの取得もすでに有しているゲノム情報をベースに挑戦する。
|
Research Products
(7 results)