2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Neural Diversity and Neocortical Organization |
Project/Area Number |
22123008
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
三品 昌美 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (80144351)
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Project Period (FY) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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Keywords | 神経科学 / 脳神経疾患 / 遺伝子 / 大脳新皮質 / シナプス / 学習 / 知的障害 / 自閉症 |
Research Abstract |
IL1-receptor accessory protein-like 1 (IL1RAPL1) は非症候性 X染色体連鎖知的障害の原因遺伝子として同定され、その後、自閉症家系においてもその遺伝子変異が報告されている。我々は、純系C57BL/6遺伝子背景の下にIL1RAPL1欠損マウスを作成し、IL1RAPL1のシナプス形成誘導活性の消失に対応して大脳皮質および海馬の錐体神経細胞のスパイン密度が有意に減少していることを見いだすとともに空間参照記憶課題(Barnes maze test)、空間作業記憶課題(eight-arm radial maze and T-meze tests)及び恐怖条件付け学習課題のいずれにおいても障害が認められることを明らかにした。 情動は動物の評価、意思決定、行動に重要な役割を担っている。中でも恐怖記憶は、動物の生存を脅かす様な状況への適応行動に必須である。行き過ぎた恐怖学習は、時に精神障害の原因ともなっている。恐怖条件付け学習のパラダイムを用いた多くの研究の積み重ねから、扁桃体、海馬及び内側前頭皮質が恐怖記憶の獲得、保持、想起、消去に重要であることが明らかにされている。我々は、線条体の中型有棘神経細胞を誘導的に除去出来るマウス系統を樹立し、文脈依存恐怖学習に線条体神経細胞が必須であることを明らかにした。さらに、線条体特異的にドパミンD1受容体あるいはD2受容体を欠損するマウスを作成し、文脈依存恐怖学習は線条体D2受容体の有無には影響されないが、線条体D1受容体の存在に大きく依存することを見いだした。したがって、ドパミン神経はD1受容体を介して恐怖に関わる負の情動シグナルを線条体に伝え、線条体直接路が文脈依存恐怖記憶の形成に重要な役割を担っていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、知的障害と自閉症の原因分子として知られるIL1RAPL1がシナプス前部の PTPδと相互作用することにより、大脳皮質神経細胞のシナプス形成を制御していることを明らかにし、IL1RAPL1の欠損は神経ネットワーク形成の不全を引き起こし、知的障害と自閉症の引き金となっていることを提唱した(J. Neurosci., 2011)。また、免疫・炎症反応に重要な役割を担っているIL-1受容体複合体を構成するIL-1 receptor accessory protein (IL-1RAcP)もシナプス前部のPTPδと相互作用することにより大脳皮質神経細胞の興奮性シナプス形成を制御していることを明らかにした(J. Neurosci., 2012)。さらに、純系C57BL/6遺伝子背景の下にIL1RAPL1欠損マウスを作成し、大脳皮質および海馬の錐体神経細胞のスパイン密度が有意に減少していることを見いだすとともに空間参照記憶、空間作業記憶及び恐怖条件付け学習のいずれにおいても障害が認められることを明らかにした。平行して、文脈依存恐怖学習に線条体中型有棘神経細胞が必須であることを明らかにし、線条体特異的にドパミンD1受容体あるいはD2受容体を欠損するマウスを作成・解析することにより、ドパミンD1受容体を介する線条体直接路が文脈依存恐怖記憶の形成に重要な役割を担っていることを明らかにした(Mol. Brain, 2013; Sci. Rep., 2014)。このように、脳神経細胞ネットワーク形成の鍵となるシナプス形成のメカニズム解明を大きく進展させ、本新学術領域研究「神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築」に貢献することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本新学術領域研究「神経細胞の多様性と大脳新皮質の構築」に関する中間評価コメントは「今後、発達障害原因遺伝子のシナプス形成機構への関与の発見や霊長類の視覚野特異的な遺伝子発現の解析などの研究成果が、個別研究から発展して本領域の核となる仕事に発展すれば、他の脳科学領域への波及効果も大きいと思われる。」であった。中間評価コメントに従い、大脳神経細胞ネットワーク形成の鍵となるシナプス形成のメカニズム解明を推進し、大脳神経細胞シナプス形成が高次脳機能に及ぼす影響を解析するとともに精神疾患との関わりを探求する。具体的には、IL1RAPL1とtrans-synapticに相互作用するシナプス前部の受容体型チロシン脱リン酸化酵素 PTPδはLAR, PTPσと分子群を構成し多様なスプライトバリアントが存在している。同様に、GluRδ2とtrans-synapticに相互作用するシナプス前部のNeurexinも多様な分子群から成っている。我々が開発したcross-linkerを用いたシナプス形成分子のunbiased screening法を発展させることにより、大脳シナプス前部における主要なシナプス形成分子であると考えられるPTP分子群とNeurexin分子群と相互作用するシナプス後部分子群を探索し、大脳シナプス形成における機能を明らかにする。知的障害と自閉症のモデル動物としてIL1RAPL1欠損マウスの表現系解析を系統的に進め、精神疾患モデル動物としてIL1RAPL1欠損マウスを関連精神疾患研究者に提供する。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Involvement of the N-methyl-D-aspartate receptor GluN2D subunit in phencyclidine-induced motor impairment, gene expression, and increased Fos immunoreactivity2013
Author(s)
Hideko Yamamoto, Etsuko Kamegaya, Wakako Sawada, Ryota Hasegawa, Toshifumi Yamamoto, Yoko Hagino, Yukio Takamatsu, Kazuhide Imai, Hisashi Koga, Masayoshi Mishina and Kazutaka Ikeda
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Journal Title
Molecular Brain
Volume: 6
Pages: 56 (E-pub)
DOI
Peer Reviewed
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