2014 Fiscal Year Annual Research Report
Src・Wnt経路による細胞競合機構とその腫瘍形成における役割
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
26114006
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石谷 太 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (40448428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 雅人 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10177058)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | 癌 / シグナル伝達 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Src・Wnt経路による細胞競合現象の分子機序と腫瘍形成における役割を明らかにするために、in vitroおよびin vivo実験系の構築と解析を行った。 1.培養上皮細胞を用いた解析:MDCK細胞を用いたSrc活性の誘導系において、Src活性化細胞が正常上皮層の下部に排斥される現象を見出した。Srcタンパク質の発現誘導系においては、Src発現細胞がapical側に排除されたのちアポトーシスで死滅することを観察した。また、3次元培養系の構築に成功し、その系においてもSrc発現細胞がapical側に排除されることを確認した。また一方で、細胞競合と関連することが推測される細胞間相互作用を介したWntシグナル活性調節機構を発見した(Cell Reports 2014)。 2.マウスモデルを用いた解析:iMOSシステムを用いてモザイク状に活性化Srcを発現誘導するマウスモデル系の作製が終了し、現在その産仔の解析を進めている。また、タモキシフェン依存的にCskをKOすることによって、モザイク状にSrcを活性化するモデルマウスの作製も終了し、その組織(表皮)の解析を行った。その結果、Src活性化部位において表皮組織構築の異常(過形成)が認められ、現在、その部位と正常組織との境界領域でのイベントの詳細な解析を進めている。 3. ゼブラフィッシュモデルを用いた解析:Wnt経路異常活性化細胞がどのような振る舞いを経てがんを形成するのかを明らかにするために、モデル脊椎動物ゼブラフィッシュの胚上皮に少数の蛍光ラベルしたWnt経路異常活性化細胞を人為的に誘導する系を構築した。この系を用いた解析により、胚上皮に誘導したWnt経路異常活性化細胞が周辺細胞とのWnt経路の活性の差を感知して死に至ることを見いだした。このことは、Wnt経路異常活性化細胞が細胞競合により上皮組織から排除されることを示唆しており、ゼブラフィッシュ胚上皮が免疫細胞を介さずにがんのもとを排除する能力を持っていることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Src誘導性細胞競合を解析するための培養上皮細胞系を、2次元培養系と3次元培養系の双方において確立した。さらに、Srcの負の制御因子であるCskの機能抑制による競合現象の培養細胞解析系をも立ち上げ、Src活性化の細胞競合現象における本質的な意義検証の準備を概ね整えた。またゼブラフィッシュの系においては、胚上皮に蛍光ラベルしたWnt経路・Src異常活性化細胞を一過的に誘導する系の構築に成功し、既知の生命現象であるSrc活性化細胞の胚上皮からの排除が起こることを再確認すると共に、Wnt経路活性化細胞が排除されるというこれまで未報告の現象を発見した。さらに、この系を用いることで、異常細胞の排除の分子メカニズムの発生遺伝学的解析が容易になり、本領域の細胞競合研究を大きく推進することが期待される。さらに、マウスモデルの系についても、計画通り順調に構築を進めている。 このように、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.培養上皮細胞を用いた解析: 2014年度に確立したSrc誘導性細胞競合の系を用いて、細胞競合の分子メカニズムの解析を進める。また、本系を参考に、Wnt誘導性の細胞競合系の確立も進める。 2.マウスモデルを用いた解析: 2014年度に確立したモデル系を用いて、Src活性化部位と正常組織との境界領域でのイベントを詳細に解析する。 3. ゼブラフィッシュモデルを用いた解析: 上述の胚上皮の系は、異常細胞の排除のメカニズムを解析するのには適しているが、長期的な細胞の観察や、細胞競合と腫瘍形成の関係の解析には不向きである。このため現在は、ゼブラフィッシュの稚魚・成魚の特定の臓器の上皮にWnt経路異常活性化細胞を誘導する実験系の構築も進めている。組換え動物の作成には動物の成長や次世代取りに時間がかかるため、後者の系の完成までには時間を要することが予測される。このため、前者の系を用いてメカニズム解析をすすめつつ、後者の系の完成を待つ予定である。 上述の研究を、研究領域内の研究者と協力しつつ、効果的に進めて行く。
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Research Products
(20 results)