2017 Fiscal Year Annual Research Report
Src・Wnt経路による細胞競合機構とその腫瘍形成における役割
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
26114006
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
石谷 太 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (40448428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 雅人 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10177058)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞競合 / Wntシグナル / Src |
Outline of Annual Research Achievements |
Wntシグナルは、初期胚や形成途上の器官、あるいは成体の腸や肝臓等においてシグナル活性勾配を形成し、その勾配により組織を構成する細胞に位置情報を与え、その情報に沿って組織空間に複数の細胞運命を誘導する。私たちは昨年度までにWntシグナル勾配の形成に細胞競合が関わることを見出した。具体的には、勾配形成過程で生じる「勾配を乱す不適切なWntシグナル活性を持つ細胞」が選択的に殺され、その結果として正確な勾配形成が達成されることを見出した。本年度は、この細胞競合のメカニズムを解析し、E-cadherinとSmadシグナル、および活性酸素が関与することを発見し、現在その成果について論文執筆中である。また、ゼブラフィッシュ皮膚を使った細胞競合解析系を開発し、Ras異常細胞が皮膚において細胞競合により排除されること、この排除にE-cadherinやMMP9が関わることなどを見出した。
また、Srcによる細胞競合の分子機序を解明するために、MDCKの複数の亜株を用いた比較解析を行った。その結果、遺伝的バックグラウンドが異なる細胞株において、排除機構が全く異なることを見出し、適応環境に応じてSrc活性化細胞の挙動が変化することが明らかとなった。遺伝子発現パターンやSrcの細胞内局在の違いから、膜マイクロドメインを介する細胞内シグナルの違い、接着関連分子の違いなどが関わることを突き止め、現在その決定的な因子の同定を進めている。また、in vivoにおいてCskをKOすることにより小腸上皮においてSrcをモザイク状に活性化する系の作製を行い、Src活性化細胞のin vivoでの挙動解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度は石谷グループの九州大学から群馬大学への移転があり、群馬大学で新たなゼブラフィッシュ飼育施設を立ち上げるなどの難関があったが、それを乗り越えて、Wntシグナル勾配形成を支える細胞競合のメカニズムの詳細解明に成功した。 Src活性化細胞による細胞競合現象の分子機序を解析にするにあたり、排除機能が異なる複数種のMDCK細胞株を見出した。以上より、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼブラフィッシュ解析で明らかにした二つの細胞競合を論文にまとめる。また、これらのメカニズム解析をより詳細に行うとともに、腫瘍形成における意義を解析する。 29年度までに見出した「Src活性化細胞の排除機能が異なる複数種のMDCK細胞株」を用いた比較解析を徹底的に行うことにより決定的な因子を決定し、競合現象の分子基盤に迫ることを計画している。また、Srcをモザイク状に活性化できるin vivoの系も新たに作製し直したので、今後上記の細胞レベルで得られる知見を検証する予定である。
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Research Products
(31 results)