2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J01343
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三井 隆弘 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 硝酸 / 消化管 / 亜酸化窒素 / 硫化物 / フローラ |
Research Abstract |
本年度は主として、大腸内における硝酸の硫化水素抑制能について研究をすすめた。概要は以下のとおりである。 背景:大腸内において、硫化水素とメタンチオールは硫酸還元菌(SRB)によって生成される。サイトクロームを阻害し、細胞粘膜を傷つける非常に毒性の強い物質である。硫化水素を抑制する手段としては、金属と結合させること、SRBと競合する細菌叢を増殖させることが考えられる。本研究では、金属として、これまで有効な効果が報告されているビスマスと亜鉛に加えて鉄を、SRBと競合する硝酸還元菌を増殖させるために硝酸を糞便培地に加え、その効果を検討した。 方法:6人の健康な青年男子から摂取した糞便を用い10%懸濁液を作成した。30mlの嫌気培養試験管に28mlの培地と糞便懸濁液と金属あるいは硝酸溶液1mlづつ加えた。溶液の濃度は0.1、0.5、1.0mMの3種類である。また、コントロールとして、水を用いた。この培養液を37℃で24時間培養し、培養後HPLCを用いて硫化物を測定した。 結果:亜鉛では1.0mM摂取時のみ57%と有意な減少が見られた(P<0.05)。鉄ではすべての濃度において、それぞれ、36%、44%、58%と有意に減少した(P<0.05)。ビスマスはもっとも効果が強く、すべての濃度において、90%以上も減少した。硝酸は0.5mMと1.0mM時に41%、68%と有意に減少した(P<0.05)。 考察:ビスマス、鉄、亜鉛とも硫化水素を抑制には効果がある。しかし、副作用があるため、実際の利用にはさらに検討が必要である。これまで、硝酸は発ガン性が強い亜硝酸やニトロソアミンの前駆物質となることから、生体には有害とされてきたが、本結果から、大腸内においては、有益な効果があると示唆された。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Mitsui T, Kondo T: "Assessing nitrate metabolism in the intestinal tract by measuring breath nitric oxide and nitrous oxide and its clinica significance"Clinica Chimica Acta. 319. 57-62 (2002)
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[Publications] Mitsui T, Kagami H, Kinomoto H, Ito A, Kondo T, Shimaoka K: "Small bowel bacterial overgrowth and rice malabsorption in healthy and physically disabled older adults"J Hum Nutr Diet. (in press).
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[Publications] 三井 隆弘: "「臨床麻酔」特集:呼気ガスモニターの最前線「呼気亜酸化窒素と腸内細菌叢」"真興交易(株)医書出版部. 5 (2003)