2002 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸色素ヘモシアニンのメラニン形成因子への転換に関する研究
Project/Area Number |
01J02646
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 亨介 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | メラニン / ヘモシアニン / フェノール酸化酵素 / 甲殻類 / 黒変 |
Research Abstract |
報告者は本来甲殻類の呼吸色素として機能するヘモシアニンがフェノール酸化酵素へと活性化し、エビ体内のメラニン形成を促している研究について本年度次のような成果を得た。 1.ヘモシアニンはメラニン生成後期経路にもはたらく これまでヘモシアニンの酵素活性はメラニン生成の初期反応、つまり、モノフェノール類からオルトジフェノール類への水酸化反応、オルトジフェノール類からオルトキノン類への脱プロトン反応を触媒すると考えられてきた。しかしながら報告者は、native-PAGEとそのザイモグラムによって、血リンパ中のヘモシアニンはメラニン生成の中間物質である5,6-ジヒドロキシインドールにも作用し、これをメラニン化する事を明らかにした。ほ乳類のメラニン中間体である5,6-ジヒドロキシインドール-2カルボン酸はヘモシアニンによる酸化は受けなかった。 2.ヘモシアニンによるメラニン生成には160kDaタンパク質の存在が必須である ヘモシアニンによるエビ体内のモノフェノール類の酸化によって生成するのは、ドーパキノンから非酵素的にされる赤茶色の物質ドーパクロムである。これまではドーパクローム以降は非酵素的に反応が進行し、最終的にメラニンが生成すると考えられてきた。しかしながら報告者は、クルマエビのクチクラから,160kDaのタンパク質を単離し、このタンパク質の存在下ではヘモシアニンのメラニン生成効率が約3倍に上昇することが明らかになった。このタンパク質の特性に関しては現在、詳細に検討中である。 当初はヘモシアニンを活性化する因子に焦点をあてた計画を立てたが、種々の問題からこれまで有益な結果は得られていない。今後はヘモシアニンのメラニン合成経路、昨年度に示したクチクラに存在するヘモシアニンに関して研究を進めて行く予定である。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Kohsuke Adachi, Takashi Hirata, Takaaki Nishioka, Morihiko Sakaguchi: "Hemocyte components in crustaceans convert hemocyanin into a phenoloxidase-like enzyme"Comparative Biochemistry and Physiology B. 134. 135-141 (2003)
-
[Publications] Kohsuke Adachi, Takashi Hirata, Atsushi Fujio, Takaaki Nishioka, Morihiko Sakaguchi: "A 160 kDa protein is essential for hemocyanin derived melanosis of prawn"Journal of Food Science. (in press).
-
[Publications] 足立 亨介: "エビ黒変の主犯は誰だ?"生物工学会誌. 80. 205 (2002)
-
[Publications] Kohsuke Adachi, Takashi Hirata, Satoshi Fujisawa, Katsunori Nagai, Morihiko Sakaguchi: "Hemocyanin-related Reactions Induce Blackening of Freeze-thawed Prawn during Storage"More efficient utilization of fish and fisheries products (edited by M.Sakaguchi), Elsevier Science (in press).