2002 Fiscal Year Annual Research Report
歴史認識の精神分析的考察 歴史認識論としての精神分析
Project/Area Number |
01J03046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
信友 建志 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 精神分析 / データベース / メディア論 / 多文化間精神療法 / 歴史認識 |
Research Abstract |
本年度は、前年に完成されたフランスの精神分析家、ジャック・ラカンの全著作集データベースの試験運用とともに、ジークムント・フロイトの英語版全集のデータベース化が完成された。現在、前者と並行して、任意の単語による全文検索を主目的とした実運用と公開に向けた技術的・法的な環境整備が行われている。以上、社会的貢献に直結する研究という面では、このような電子社会に向けた普遍的な研究基盤の整備に対する成果が生み出されている。また、個人の理論的研究としては、『ユビキタス時代の主体の精神病理構造についての考察』(情報文化学会第十回大会)と題した発表を行った。同報告は、症状という側面から分析することによって、メディアを通じた自己認識のあり方の変遷を構造的に把握しうるという提議を行ったものであり、現在同発表の公表に向け、論文化が進められている。この研究によって、現在進展している情報化社会を生きる主体にとって、自己の歴史に対する認識がどのような構造を持つものであるか、そしてそれが主体にとって持つ意義や、今後の変容のあり方が考察されている。さらにこの研究に並行して、グローバル化が進む現在の社会において、多文化間の狭間におかれた主体がどのように自己の歴史を認識するかという問題に対応するという課題がたてられた。これを考察するべく、多文化間精神療法的な観点から主体の歴史認識の構造の分析の準備が行われた。そのために、メキシコ系移民の多いアリゾナ地区の研究者をはじめとする海外各地の情報交換および資料収集、さらに日本における同問題の現状についての調査を行い、予備調査を進めた段階に到達したところである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] ログン・ディスポ著, 信友, 村澤訳: "テロル機械"現代思潮新社. (2002)
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[Publications] 信友, 手束, 中西: "言語臨床事例集第五巻人間学的言語臨床"学苑社(予). (2003)