2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J03859
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
出口 和彦 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピン三重項超伝導 / 超伝導多相現象 / クーパー対の波動関数の対称性 / カイラル超伝導 / ゼロ磁場Hall効果 |
Research Abstract |
本研究は、スピン三重項超伝導体の超伝導状態におけるクーパー対の波動関数の内部自由度(スピン自由度,軌道自由度)に起因する新しい超伝導現象の探索を目的とする。そこで、スピン三重項超伝導体Sr_2RuO_4に関して次の[1][2]を行った。 [1]超伝導Sr_2RuO_4への外場(磁場、一軸圧力など)の印加により、内部自由度に起因する複数の超伝導相の誘起と、比熱測定による超伝導相間の相転移の検出。Sr_2RuO_4のab面平行磁場下超伝導二段転移の比熱測定による研究。 スピン三重項超伝導体Sr_2RuO_4の超伝導状態は縮退していると考えられており、この縮退は系の対称性を下げるような外場を印加することにより解け、新たな超伝導相に相転移すると考えられる。当グループで育成した高純度Sr_2RuO_4単結晶、希釈冷凍機を用いた試料回転機構付きの低温磁場中比熱測定装置を用いて、精確な磁場方向制御下でSr_2RuO_4の超伝導状態を調べた。そして、Sr_2RuO_4では磁場中で内部自由度に起因して複数の超伝導相が誘起される多相超伝導現象が観測され、しかも他のスピン三重項超伝導体とはきわめて異なり、磁場中で別の超伝導相が誘起されるかどうかは磁場方向非常に敏感であり、上部臨界磁場の抑制という現象が同時に起こることがわかった。以上の一年目に得られた結果を国際会議(MOS2002)で口頭発表し、論文にした。 また、[1]の実験をさらに発展させるためにベクトルマグネット、マグネット回転台、希釈冷凍機、高精度比熱測定装置を使用した今までにない超高精度磁場方向制御下のおける比熱測定装置を開発した。現在、この装置を用いて各超電導相におけるクーパー対の波動関数の対称性を比熱の磁場方向依存性から決定する実験を行っており、順調に結果が出てきている。それを論文にまとめる予定である。 [2]時間反転対称性を破った超伝導状態に関する新超伝導現象の探索とその実験環境の開発。具体的には、カイラル超伝導特有の現象であるゼロ磁場Hall効果の探索。 吉岡正樹氏との共同研究によりこの研究は進められ、実験を精密化とこの現象の試料依存性に焦点を絞った研究を行った。現時点までに一定の結果が得られたので、その結果は論文にまとめられる予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kazuhiko Deguchi: "Superconducting Double Transition and the Upper Critical Field Limit of Sr_2RuO_4 in Parallel Magnetic Fields"Journal of the Physical Society of Japan. 71. 2839 (2002)
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[Publications] Yoshitru Maeno: "Toward the Full Determination of the Superconducting Order Parameter of Sr_2RuO_4""Ruthenate and rutheno-cuprate materials : unconventional superconductivity, magnetism and quantum phase transitions"(Springer-Verlag, 2002). 603. 1 (2002)
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[Publications] Naoki Kikugawa: "Superconducting Order Parameter"Physica.