2002 Fiscal Year Annual Research Report
幕末明治の江戸東京歌舞伎の研究-小芝居の観点から-
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01J06332
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 かつら (佐藤 かつら) 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 歌舞伎 / 興行史 / 小芝居 / 新聞種 / 喜昇座 / 劇場政策 / 東京 |
Research Abstract |
本年度は、主に明治期の小芝居・大芝居について、基礎資料の調査・収集・整理を前年に引き続き行い、またその制度的規定及び演劇的特徴について理解を深めた。具体的な研究成果は次の通りである。まず、明治20年代の東京における劇場政策を捉える際の基礎資料である、東京都公文書館所蔵の公文書類、さらに「読売新聞」などの当時の新聞資料および番付等の演劇資料を調査して、以下のことについて明らかにした。明治23年の劇場取締規則改定により、それまで見世物として興行許可を受けていた「道化踊」(小芝居)が劇場に昇格し、「小劇場」という名称が与えられた。それまで公認されていた劇場は「大劇場」となった。このことにより、小劇場に進出したい大劇場の興行師や俳優と、これまでの利益を守りたい小劇場の座主、及び大劇場にも出演したい小劇場の俳優らの利害関係が複雑にからみ、様々な紛争が起こった。近世以来の劇場をめぐる制度が、近代的制度へと変化する様相、及びその葛藤と困難を明らかにした。次に、明治初年から10年代における、歌舞伎の演劇的内容の一端を、当時勃興した新聞という新しい情報媒体との関係に着目し、当時の新聞資料、脚本(台帳)、番付を調査し、読み解いて、以下のことを明らかにした。新聞の流行に伴い、歌舞伎も新聞記事を脚色したり新聞を舞台に登場させていった。特に明治10年当時の小芝居格の喜昇座では、4種の新聞記事を脚色し、明治の現代劇を作り上げたが、現代劇でありながら、従来の伝統的な御家物という枠組を用いていた点が大芝居とは異なっていた。明治初期における小芝居格の芝居が、題材を目新しいものから取りながらも旧来の手法も用いるという重層的な内容的構造を持っていた一例が明らかになった。来年度は、制度的規定について総括的な解明を行い、また大芝居の演劇的内容の分析も行っていきたい。
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Research Products
(2 results)