2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01J06359
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 昌彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マウス / 初期胚 / チロシンリン酸化酵素 / Jak2 |
Research Abstract |
多くの癌原遺伝子がそうであるように、チロシンリン酸化酵素は細胞増殖、分化などに関連する必須の機能を有している。本研究では本来シグナル伝達するために細胞膜近傍に存在しているチロシンリン酸化酵素Jak2がマウス初期胚において染色体に局在するという新規の知見を得たことから、この機能を明らかにすることにより、哺乳類初期胚の発生制御メカニズムを解明することを目的としている。 これまでにJak2のチロシンリン酸化酵素活性が発生に必須なものであることを特異的なシグナル伝達阻害剤B42により2細胞期G2期に細胞周期が停止することから明らかとした。そこでこのチロシンリン酸化酵素活性がJak2の局在および機能にどのように関与しているかを明らかにするための実験を行った.その結果、Jak2の局在はコントロール群と相違はなく、チロシンリン酸化酵素活性が局在に関与していないことを明らかとした。つぎに転写を阻害することでも同様の時期に細胞周期が停止することから転写活性への影響を調べた。その結果、全体的な転写活性への影響は見られなかった。また、クロマチン構造に影響を与えることで転写制御に関与していることが知られているHistone H3 Lys9のメチル化にも変化は認められなかった。これらのことから、全体的なレベルでの転写、またクロマチン構造の変化による転写制御に対して、Jak2のチロシンリン酸化酵素活性が関与していないことを明らかとした。 さらに,Jak2とGFP融合タンパクを作製、導入することで,Jak2の局在機構を明らかにするための実験を行った。Cos7,Nb2,3T3細胞などの培養細胞にコンストラクトを導入し、その蛍光を観察した結果、これらの培養細胞では細胞質のみに局在が認められたが、核への局在は認められなかった。しかしマイクロインジェクション法により導入した胚は核内に蛍光が検出されたことから,Jak2は初期胚特異的に核に局在することを明らかとした。 現在、JakとGFP融合タンパク発現ベクターに様々な欠失変異を導入することで、局在や新規の機能に関与するに機能領域の探索を行っている。また、機能的な関与の同定のために発現関始時期の特定を行っている。
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