2002 Fiscal Year Annual Research Report
てんかん原性CI^-ホメオスタシス分子機構のヒト摘出病巣及びモデル動物を用いた解析
Project/Area Number |
01J07011
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
清水 千草 浜松医科大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | GABA / Cl^-cotransporter / forcal freeze-lesion model / in situハイブリダイゼーション法 |
Research Abstract |
近年、抑制性伝達物質として作用すべきGABAが、逆に興奮性に作用する場合があることが示されている。GABAはCl^-チャネルを開口させるので、過剰な神経興奮により、Cl^-ホメオスタシスが破綻することがこの現象の引き金になると考えられる。従って、脳の異常な興奮を引き起こすてんかんの形成や伝播などにCl^-ホメオスタシスが関与している可能性がある。本研究ではCl^-ホメオスタシスを調節する分子としてCl^-トランスポーター(KCC2,NKCC1)に注目した。加えて、臨床的に部分てんかんとよばれる系において大脳皮質形成異常を有する例が多いことが、明らかになってきた。本研究は大脳皮質形成異常モデル動物及びヒト病巣摘出標本を用い、てんかんにおけるCl^-ホメオスタシス破綻の分子メカニズムを解明する事を目的とし、in situハイブリダイゼーション法、Cl-imaging法等による検討を行った。 1.大脳皮質発達におけるCl^-トランスポーター遺伝子と細胞内Cl^-濃度の関連 正常動物の発達過程におけるCl^-トランスポーター遺伝子の発現変化をIn situハイブリダイゼーション組織化学法を用いて検討した。その結果、生直後の脳室帯ではNKCC1遺伝子の発現は、皮質板と比較して非常に強く、第5・6層でのNKCC1遺伝子の発現は皮質板より弱かった。KCC2遺伝子の発現パターンはNKCC1と逆転していた。この発現パターンはMEQを用いたCl^-イメージングによる細胞内Cl^-濃度と対応していた。(第25回神経科学大会他、Neuroreport他、2002年)。 2.大脳皮質凍結損傷モデル動物(forcal freeze-lesionラット)におけるCl^-トランスポーター遺伝子の発現変化 新生仔ラットの頭皮を切開し頭蓋骨表面を露出し、液体窒素で冷却した直径1mmの銅棒を8秒間頭蓋骨直上に静置し、大脳皮質凍結損傷モデル動物を作成する。この動物を用いて、凍結損傷部位及びその周辺部位におけるこれら遺伝子の発現についてIn situハイブリダイゼーション組織化学法により検討した。その結果、作成4日後にKCC2遺伝子の発現が消失している部分が認められ、また、NKCC1遺伝子の発現が損傷部位において増加していた(第80回日本生理学会、2003年3月)。 3.ヒト摘出病巣におけるCl^-トランスポーター遺伝子の検出 ヒトの各Cl^-トランスポーター遺伝子(KCC2,NKCC1)を正常部分を多く含んだ組織を用いてIn situハイブリダイゼーション組織化学法によりその発現局在等を検討した。その結果、NKCC1遺伝子は非常に弱いながらも、アストロサイトと神経細胞に、KCC2遺伝子は神経細胞にのみ認められた。 4.RT-PCR法によるCl^-トランスポーター遺伝子の検出 正常ラットの大脳皮質の脳スライス標本を用いたgramicidin穿孔patch clamp法を行い、細胞内Cl^-濃度を測定した単一神経細胞よりmRNAを採取し、Single-cell mutiplex RT-PCR法を用いて、Cl^-トランスポーター遺伝子及び内部標準としてβ-actin遺伝子を検出し、半定量を行える条件を決定した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Nabekura J., Shimizu-Okabe, C., et al.: "Reduction of KCC2 expression and GABA_A receptor-mediated excitation following in vivo axonal injury"Journal of Neuroscience. 22. 4412-4417 (2002)
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[Publications] Shimizu-Okabe, C., et al.: "Layer-specific expression of Cl^-transporters and differential [Cl^-]_i in newborn rat cortex"Neuroreport. 13. 2433-2437 (2002)
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[Publications] Wang C., Shimizu-Okabe, C., et al.: "Developmental changes in KCC1, KCC2, and NKCC1 mRNA expressions in the rat brain"Brain Research Developmental Brain Research. 139. 29-66 (2002)