2002 Fiscal Year Annual Research Report
二量化の制御に基づくテトラチアペンタレン系有機伝導体の開発と物性
Project/Area Number |
01J11257
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
圷 あかね 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 電荷移動錯体 / 有機伝導体 / テトラチアフルバレン |
Research Abstract |
有機伝導体を構成する電子供与体分子としてテトラチアフルバレン(TTF)分子は、ほとんどの有機超伝導体の構成成分になる重要な分子である。TTFを拡張した新規電子供与体を開発する試みとして、TTFを2分子縮合させたテトラチアペンタレン(TTP)と呼ばれる分子で多数の高伝導の伝導体が得られているが、本研究ではTTPの二量化の制御によって伝導性を制御しようとする発想に基づいて、以下のような伝導体の開発と、その構造の解明を行なった。 (1)片側にセレノメチル置換基を有し、かつセレン置換体1,3-ジセレノール環とし、反対側にエチレンジチオ基を持つTTP分子を用いて電荷移動塩を作成した。これまでTTP系の伝導体は結晶性が悪いため結晶構造の決定が比較的困難であったが、CCD検出器を用いたX線回折計を用いることによって、これまでに5種類の塩の結晶構造を決定することができた。これらの塩ではセレン置換による分子の二量化によって伝導パスが1次元に制限され、伝導性はかえって低下することが判明した。 (2)片側にメチルチオ基を有し、反対側無置換のTTPの過塩素酸塩の構造を決定し、歪んだθ型構造と呼べる新しいタイプの構造を明らかにした。 (3)TTF3分子を縮合させたTTPY分子と呼ばれる分子にヨウ素ドープしたときの伝導性を調べ、従来のTTFはもちろん、TTPとも異なり、TTPY系ではオーバードープが容易に起こって、いったん向上した伝導度が再び低下する、という現象が一般的に起こることを明らかにした。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] A.Akutsu-Sato et al.: "Effect of Included Guest Molecules on the Normal State Conductivity and Superconductivity of B"-(ET)_4[(H_3O)Ga(C_2O_4)_3]G"J. Amer. Chem. Soc.. 124(42). 12430-12431 (2002)
-
[Publications] A.Sato et al.: "Calorimetric Study of Halogen-Bridged Mixed-Valence Binuclear Chain Complex, Pt_2(n-BuCS_2)_4I"Phys. Rev. B. 66. 115110 (2002)