2002 Fiscal Year Annual Research Report
受容体タンパク質の活性化に対する振動エネルギー移動の理論的研究
Project/Area Number |
02J00230
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久保 稔 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | グルタミン酸受容体 / 静電相互作用 / 振動相互作用 / 分子衝突 / 振動励起 / 構造変化 / 量子化学 |
Research Abstract |
本研究は受容体の活性化機構を解明するために,イオンチャネル型グルタミン酸受容体をモデルにして,アゴニストの結合による受容体の振動励起のプロセスを明らかにした. 1.アゴニストの受容体への結合 グルタミン酸受容体のリガンド結合領域は2つのローブ状の構造から構成されており,リガンドはその間の溝に結合する.受容体サブユニットの一つであるGluR2のリガンド結合領域の静電ポテンシャルを計算した結果,結合部位の溝はArg485を中心に強いプラスの静電ポテンシャルを形成していることがわかった.また,Arg485が存在するローブとは逆のローブに小さなマイナスの静電ポテンシャルが形成されていた.次に,グルタミン酸受容体のリガンド7種の静電ポテンシャルを計算した結果,リガンドは共通して分子の両端にマイナスの静電ポテンシャルを形成していることがわかった.受容体は,分子の両端にマイナスの静電ポテンシャルを持つリガンドを、プラスの静電ポテンシャルによって溝に引き入れた後,Arg485とは逆のローブのマイナスの静電ポテンシャルによってArg485に向かわせているのであろう.リガンドの結合がArg485への結合から始まることは,結晶構造データからも示唆されている. 2.アゴニストの結合による受容体の振動励起 静電相互作用により加速したアゴニストの衝突によって,Arg485は振動励起しうる.そこで,アゴニスト・受容体間振動相互作用に関する以前の研究に基づいて,アゴニストのカルボキシル基の対称伸縮振動とArg485側鎖の変角振動に着目し,これらの振動の励起確率を一次摂動論を用いて計算した.その結果,この2つの振動はサブピコ秒で同時に励起することが明らかにされた.Arg485の振動励起エネルギーは,分子内振動エネルギー再配分を通して,受容体の構造変化をトリガーするのであろう.
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