2002 Fiscal Year Annual Research Report
多雪地域の森林における、撹乱土壌内の窒素循環に関する研究
Project/Area Number |
02J00318
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小澤 恵 北海道大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 窒素循環 / 多雪地域 / 融雪 / 硝酸態窒素 / 人為的撹乱 / 掻き起こし |
Research Abstract |
多雪地域の森林における窒素動態に、植生・表土除去処理および融雪プロセスが及ぼす影響を明らかにするために、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター雨龍研究林内の、掻き起こし処理区域において調査を行った。 野外において降雨および10cmと40cmの2深度における土壌溶液を、処理から2年が経過した処理区とその対照区において1週間毎に採取し、成分分析を行った。掻き起こし処理区の土壌溶液中の硝酸態窒素(NO_3-N)濃度は、両深度とも対照区に比べ非常に高かった。降水の形態によって季節を無雪期(6〜11月)、積雪期(12〜3月)、融雪期(4・5月)の3つの期間に分けると、深度10cm土壌溶液中のNO_3-N濃度は無雪期に高く、積雪期に入ると低下し、融雪期で急激に低下するという季節変動を示したが、深度40cmでは融雪期の濃度低下以外には変動が少なかった。深度40cmの土壌からのNO_3-N正味流出量を算出した結果、正味流出は処理区でのみ起こっており、年間の約60%が融雪期に流出していた。これらのことから、掻き起こし処理区では無雪期に表層で生成されたNO_3-Nが水移動の少ない積雪期には下層に貯留され、それが融雪期に多量の融雪水と共に急激に土壌から流出する、と言うメカニズムが存在することが示唆された。 掻き起こし処理経過年数が1〜7年の計7地点における単位面積あたりの土壌中のNO_3-N現存量は、処理後1-2年は対照区より高く、その後年々減少する傾向を示した。一方、回復した植生による窒素吸収量は年々増加しており、このことがNO_3-N現存量経年減少の大きな要因であると考えられる。しかし、植生が回復していない処理後1〜3年目にも現存量は年々減少していた。融雪による土壌からの養分物質の溶脱やそれに伴う微生物活性の変化などが初期の現存量減少に影響している可能性があるため、それらについては目下解析中である。
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Research Products
(1 results)