2002 Fiscal Year Annual Research Report
トランスジェニックマウスを用いた体細胞突然変異誘導に関与する要素及び要因の解明
Project/Area Number |
02J02130
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
寺内 亜希子 東京理科大学, 生命科学, 特別研究員(PD)
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Keywords | 体細胞突然変異 / トランスジェニックマウス / IgH鎖 / 抗体タンパク発現 / B細胞分化 |
Research Abstract |
抗体の多様性獲得機構のひとつに体細胞突然変異が挙げられる。体細胞突然変異は通常生体内で有害とされる突然変異が抗体の機能向上を図っているという点で、特異かつ重要な現象の一つであるが、この分子機構についてはまだ明確ではない。そこで私は、トランスジェニックマウスを用いて特に体細胞突然変異の発現における役割が明らかではないIgH鎖遺伝子の3'エンハンサー(3E)に注目して体細胞突然変異の高頻度な発現に寄与するシス領域を解析した。用いた導入遺伝子はプロモーター、VDJ遺伝子、イントロンエンハンサー、C遺伝子を共通にもち、3'Eの構造が異なるもの、すなわち1)3'Eを全くもたないもの、2)3'EのHS1とHS2のみをもつもの、3)3'Eを総て(HS1,HS2,HS3b, HS4)もつものとし、また導入遺伝子と在来遺伝子との識別のためにC領域にはヒトCμ遺伝子を用い、またB細胞分化への影響を極力避けるために膜貫通領域を取り除いた。その結果、HS3bもしくはHS4こそが体細胞突然変異を誘導する真のシス領域であると思われる。 次に、この導入遺伝子が膜貫通領域を持たないことを利用して、これまでの報告では明らかではない、分泌型IgH鎖が及ぼすB細胞分化、もしくは抗体遺伝子発現への影響を検討することを目的とした。その結果、IgH鎖導入遺伝子は転写活性を保持しているにもかかわらず、そのタンパク発現はほとんど総ての分化段階におけるB細胞において抑制されており、またB細胞分化は特にpre-B細胞段階において抑制されていた。特にこのトランスジェニックマウスにおけるB細胞分化は、サロゲートL鎖欠損マウスのそれと類似していることから、分化のスタート時点で分泌型IgH鎖を持つB細胞は、おそらくサロゲートL鎖と複合体を作り、pre-B細胞段階でのBCR発現を阻害しているものと推測できる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 東隆親, 寺内亜希子: "Ig遺伝子の転写活性と体細胞突然変異"Annual Review 免疫 1998. 79-85 (1997)
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[Publications] 寺内亜希子, 東隆親: "体細胞突然変異における3'エンハンサーの寄与"臨床免疫. 33(5). 573-580 (2000)
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[Publications] AKIKO TERAUCHI: "A Pivotal Role for DNase I-Sensitive Regions 3b and/or 4 in the Induction of Somatic Hypermutation of IgH Genes"The Journal of Immunology. 167. 811-820 (2001)