2003 Fiscal Year Annual Research Report
社会的実践としての民俗技術の変容に関する人類学的・民族誌的研究
Project/Area Number |
02J02753
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
大西 秀之 総合地球環境学研究所, 研究部, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 技術 / 社会的実践 / 伝統工芸・民俗工芸 / 開発 / 身体 / 徳之島・奄美大島 / 小商品開発 / 北タイ・イン川流域 |
Research Abstract |
本年度は、前年度(平成14年度)に実施した手工芸生産に加え、生存のための生業活動に焦点を当てた調査・研究に着手した。 具体的な活動としては、国内と海外の二つの地域で調査を実施した。まず、国内は、前年の予備調査を踏まえ引き続き、鹿児島県・奄美大島・徳之島において本格調査を8月に行った。同調査では、同地域における「地場産業」である大島紬の歴史的変遷を外部マーケットとの関係を中心に追究を試みた。とくに、今回の調査成果としては、織工や織元(問屋)などにインタビューを行い、当事者のライフヒストリーとしての大島紬産業の変遷の把握が可能となった。これとは別に、同調査では、海浜における海洋資源の採集活動に従事する人々を対象として、その活動を支える認知と行動に焦点を当てた。この調査は、次年度以降も継続する予定であるが、一人ひとりのスキルのレベルに応じて、同一場所でも空間認識に差異やズレがあることなどが明かとなった。加えて、海浜の資源の慣習的な利用のあり方についても、一定の理解を得ることが出来た。 いっぽう、本年度は、ラオスと国境を接する北タイのイン川流域においても10月に調査を実施した。同調査では、イン川流域に暮らす多様な出自のグループを対象として、彼等の河川や森林の資源利用についての観察と聞き取りを行った。その結果、市場経済や近代的法制度の浸透、資源変動や地域開発などによって、従来は共有的で比較的アクセスが自由であった資源に対する所有権のあり方や制度の変化を捉えることができた。また、国境をも越える、資源や生産物のトランスボーダー化も確認することが出来た。 以上が平成15年度中におこなった調査・研究の成果である。若干の修正はあったが、申請当初の計画をほぼ達成することができたと考えられる。次年度は、本年度の調査・研究を継続しつつ成果を提起してゆく予定である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 大西 秀之: "社会的実践としての工芸技術の変容:フィリピン・ルソン島北部山地民社会における機織りの産業化を巡って"アジア・アフリカ言語文化研究. 65. 67-88 (2003)
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[Publications] 大西 秀之: "ルソン島北部山地民の機織りに纏わる近代史:植民地支配による「伝統工芸」の形成"日本オセアニア学会WEWSLETTER. 75. 1-9 (2003)
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[Publications] 大西 秀之: "柄の記憶:木工におけるアイヌの人々の身体技法の歴史"民具マンスリー. 36(4). 11-18 (2003)
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[Publications] 大西 秀之: "境界の村の居住者:"トビニタイ文化"集落における居住者の出自と世帯構成"日本考古学. 16. 157-177 (2003)
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[Publications] 大西 秀之: "市場経済による"伝統工芸"の再生:ルソン島北部山地民の機織りを事例として"南方文化. 30. 85-107 (2003)