2002 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの生活および子ども時代の回想におけるナンセンス体験の意義
Project/Area Number |
02J03057
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
北山 由美 立教大学, 文学部, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 自己 / 物語 / 社会学 / ノンセンス(ナンセンス) / 言語 / 経験 |
Research Abstract |
昨今の社会学や教育学において、「自己」は物語という概念との関連で論じられることが多い。そこでは自己は、物語自体がそうであるように、論理的一貫性やまとまりのある現象として捉えられてきたように思われる。しかし、私たちは自己を必ずしもわかりやすく整理されたかたちで経験しているわけではないのではないだろうか。物語論的自己論が前提とする人間観は、論理性や首尾一貫性を重視しすぎているため、実際には非現実的なものであるように思われる。それに対して拙論では、私たちの実際の自己経験が曖昧であったり論理性を欠いている場合があったりするという、いわば「あたりまえ」のことを理論的に論証することを試みた。まず物語論的な自己論を概観し、その議論の一定の妥当性を認めた上で、物語や言語というものが物語論において想定されているほどには確固としたものではないことを論証し、物語への信念や執着を相対化する必要性を結論として述べた。拙論でのこうした知見は、イギリスにおけるnursery rhymes(Mother Goose)に見られるnonsenseを研究する中で得たものである(そのため自然な流れとして英語で執筆した)。そこでの人間観からすると、人間というのは必ずしも予知可能な行動をとったり、論理的な言動を見せるわけではない。この一見「あたりまえ」な人間性、あるいは「子ども」的な性質が、社会学的な人間観においてはなぜか見過ごされているように思われる。教育社会学も含めた社会学は、あたかも人間のあらゆる行為には論理的な意味や秩序があるかのように考える傾向がある。そのような理論は、私たちの実際の経験からかけ離れてしまっているのではないだろうか。したがって拙論では、現実をより深く捉えるためにより複雑な人間観を導入する必要性を提案した。次年度はこれをもとにインタビュー等実践的な調査を行い、積極的に研究発表をする予定である。
|
Research Products
(1 results)