2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J03549
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東 克明 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 様相解釈 / ベルの不等式 / 相対論的場の量子論 / Dirac粒子 / 相対論的粒子 |
Research Abstract |
1.様相解釈を始めとする量子論の諸解釈において、ベルの不等式が破れることは、重要な概念的、哲学的問題である。だが、通常のベルの不等式の議論は非相対論的文脈のもとで行われ、結論のみ、あたかもその議論が相対論的文脈でなされたかのように、空間的に離れた二つの事象間の相関に適用される。だが、厳密には、議論のすべてを相対論的舞台設定のもとで再構成し、それでもベルの不等式が破れることを導出するのが好ましい。そこで、非相対論的文脈におけるベルの不等式の諸前提が相対論的ケースにおいてどのように再定式化されうるのか、及びそれらの諸前提間の論理的関係を明示的にし、研究報告した。(科学基礎論夏のセミナー9月於北海道大学) 2.様相解釈は量子力学という理論についての解釈である。だが、解釈以前に「相対論的粒子の量子力学は可能か?」という問いに対するno-go定理がある。その定理は、相対論的に自然ないくつかの要請(並進共変性、等)を仮定すると、超平面上のどの有界な領域においても粒子を検出する確率が0になる、という定理である。だが、この定理が具体的な相対論的量子力学にどのように適用され、そしてそれが何を意味するのかは明らかではない。その定理をディラック自由粒子に適用してみると、次の結果が得られる。ディラック自由粒子を正のエネルギー解に制限すると、空間的に離れた領域に対応する二つの射影作用素が可換でないことがありうる。このことは、ある領域と空間的に離れた領域で、測定を行うか否かに応じて、元の領域での統計が変化することを意味する。以上のことを研究報告した。(科学基礎論春のセミナー3月於東北大学)
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