2002 Fiscal Year Annual Research Report
動的平均場理論を用いたランダムネスのある強相関電子系の電子の研究
Project/Area Number |
02J04215
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
武藤 哲也 埼玉大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 動的平均場理論 / コヒーレントポテンシャル近似 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
動的平均場理論とコヒーレントポテンシャル近似を組み合わせた新しい理論的枠組を発展させるため、まず、コヒーレントポテンシャル近似の簡単な適用例として、Fe_<1-x>Co_xSiの強磁性を研究対象とした。FeSiもCoSiも、ともに、磁気的秩序は持たないが、FeをCoで置換したFe_<1-x>Co_xSiは、ある濃度領域で強磁性を示すことがわかっている。この強磁性自体の研究の歴史は古いが、その中では、FeSiとCoSiの状態密度を濃度xの比率で単純平均した状態密度が用いられており(リジッドバンド近似)、系の不均一性はよく取り込まれていなかった。本研究では、系の不均一性をより積極的に取り込むため、コヒーレントポテンシャル近似を用いて状態密度と磁化率を計算し、強磁性転移温度のx依存性を調べた。定性的には、実験と同様に、中間濃度領域で強磁性が発現することが確かめられた。系の不均一性は転移温度を抑制する効果があるが、電子間斥力相互作用にも、同じく転移温度抑制効果があることが知られている。本研究の結果では、ある有効相互作用によって、系の不均一性による転移温度抑制効果と完全に等価な抑制効果を与えることはできず、系の不均一性と電子間相互作用では、その抑制効果が異なることがわかった。この研究の成果をまとめた論文は、Journal of Physics : Condensed Matterに投稿し、掲載が決定している。 また、動的平均場理論を用いた強相関効果の研究も引き続き行った。酸化物高温超伝導体を含む遷移金属酸化物の光学伝導度では、通常金属で見られる、Drudeモデルで記述できる応答(Drude応答)とは異なる応答が見られることがある。特に高温で顕著になる、この特異な光学応答を調べるため、簡単なモデルに動的平均場理論を適用して、強い電子相関によって絶縁体的になった系の、高温での光学伝導度を計算した。
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