2002 Fiscal Year Annual Research Report
感情労働の民族誌的研究-ジェンダー・文化・企業マスキュリニティ-
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02J05399
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松田 さおり 名古屋大学, 文学研究科・博士後期課程・日本学術振興会特別研究員(DC2)
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Keywords | 企業文化 / ジェンダー / ハビトゥス / マスキュリニティ / 家父長制 / 身体 / (空間的)実践 / 公的 / 私的世界 |
Research Abstract |
本研究の目的は、女性労働の文化的側面を「感情労働概念」を用いて、民族誌的研究によって明らかにしようとするものである。本年度は参与観察、インタビュー調査及び分析を行い、研究主題に関する文献の収集とその分析を進めた。その具体的な実績の概要は次の通りである。 1.参与観察、インタビュー調査 本研究の地域的調査の一環として、ホステス労働現場の参与観察と、インタビュー調査を、2002年3月・4月及び12月に、東京都中央区銀座6-8丁目地区に地域を絞って行った。ホステス労働という特殊な労働現場が、家父長制的企業文化あるいは日本企業の持つマスキュリニティ的性格の発現の空間であるばかりでなく、ある特定の文化的傾向をもち、言説によって位置付けられ、それらを特に感情労働を伴うホスピタリティの分野で女性が身体的に実践する空間:「ハビトゥスの集合体」であることを明らかにした。 2.サーピス労働に従事する女性をめぐる文献調査 本研究の比較文化的文献・資料調査の一環として、サービス労働に従事する女性をめぐる文献・資料調査を、国内外で行った。2002年5月から9月までは、英国国立エセックス大学現代日本研究所にて当該調査に従事した。英国のパブ文化や、欧米のカクテルウェイトレスを扱った文献、あるいはデータ・アーカイブから得られた資料等と国内で得られた文献資料を比較検討する中で、働く女性の身体性は、現代の日本においては1)フォーマルかつ伝統的な公的領域と、2)インフォーマルかつポストモダン的な私的領域、の二つの領域に埋め込まれた存在として考えることが有用であると確認された。具体的には、働く女性のセクシャリティを含む身体性は、公的領域において、「つつましい」ものであると信じられ、伝統的な性役割の影響によって様々に規則付けられている。その一方で、高度成長期以降の市場化と消費が急激に増大した文化の所産である私的領域においては、働く女性の身体性は流動的で「自由な」存在として扱われているということを析出した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 松田, さおり: "銀座ホステスクラブの生活誌"生活学論叢. Vol.8(印刷中). (2003)
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[Publications] 松田, さおり: "商空間としての銀座ホステスクラブ"比較人文学研究年報. 2003年号(印刷中). (2003)