2002 Fiscal Year Annual Research Report
非局在型ケイ素π電子系カチオン、ラジカル及びアニオン種の合成及び物性に関する研究
Project/Area Number |
02J06210
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松野 忠宏 筑波大学, 化学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機ケイ素化合物 / アルカリ金属 / 酸化還元反応系 / ケイ素π電子系化合物 / 小員環化合物 / シリルアニオン / シリルカチオン / シリルラジカル |
Research Abstract |
有機ケイ素化合物のアルカリ金属錯体は、有機ケイ素化学や有機合成化学において有用な化学種であり、精力的に研究が行われている。これまで、ケイ素アニオン種に関して、その合成法や反応性、構造学的観点から多くの研究が報告されているが、ケイ素のみから構成されるπ電子系アニオン種に関する研究は、合成法上の制約からほとんど報告例がなかった。これまで、シクロプロペンのケイ素類縁体であるシクロトリシレンとルイス酸との反応によって、初めての高周期2π電子系ホモ芳香族化学種であるシクロテトラシレニリウムイオンの合成に成功し、ケイ素環状アリルカチオンとしての特徴について、NMR解析およびX線結晶構造解析により明らかにしている。また、シクロテトラシレニリウムイオンは、その一電子還元反応によって初めての単離可能なシリルラジカルであるシクロテトラシレニルラジカルへ、容易に変換可能であることも報告している。本研究では、シクロテトラシレニリウムイオンのに電子還元反応によるケイ素環状π電子系アニオン種、シクロテトラシレニドイオンの合成について検討した。 シクロテトラシレニリウムイオンと過剰量の金属リチウムをジエチルエーテル中で反応させたところ、反応溶液は速やかに緑色へと変化した。得られた反応混合物を、ヘキサンーTHF混合溶媒から再結晶することによりリチウム原子を対カチオンとする、シクロテトラシレニドイオンを緑色結晶として単離することに成功した。X線結晶構造解析の結果、対カチオンであるリチウム原子はケイ素四員環内の3つのケイ素とη3型に結合しており、アリルアニオンとしての特徴を強く反映した構造となっているが、それぞれのケイ素-リチウム結合長は異なっており、非対称な架橋構造となっていることを明らかにした。また、シクロテトラシレニドイオンは、トリエチルシリルカチオンを用いた酸化反応によって対応するラジカル種へと変換可能であることも、併せて明らかにした。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 松野 忠宏, 一戸 雅章, 関口 章: "Cyclotetrasilenide Ion : A Reversible Redox System of Cyclotetrasilenyl Cation, Radical, and Anion"Angewandte Chemie International Edition. 41巻・9号. 1575-1577 (2002)