2003 Fiscal Year Annual Research Report
文章理解のオンライン処理過程における自動的処理成分と制御的処理成分
Project/Area Number |
02J06303
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井関 龍太 筑波大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | テキスト理解 / オンライン推論 / 整合性 / アクセス可能性 / プライミング |
Research Abstract |
テキストを読んでいる間に生じる推論の規定因が整合性を確立する必要性であるのか,文章中の手がかりから得られるアクセス可能性の多寡であるのかを検討した。この目的のため,整合性の仮定からは弁別的な予測がなされる予期的推論と橋渡し推論の相互作用とそれらの比較を行った。整合性の仮定によれば,橋渡し推論は整合性を確立する必要性から,特化したメカニズムによって優先的に生成されるはずである。予期的推論はこのメカニズムからは導かれないとされる。一方,アクセス可能性の仮定によれば,橋渡し推論と予期的推論の違いは,推論を喚起する文章に含まれる手がかりの量の違いによっている。予期的推論では,どのような結末が起こるのか,常に不定の状態で推論を行わねばならないのに対し,橋渡し推論の場合は常にイベントのいずれかの結末が起こったことを示唆する情報が与えられた状態から推論が始まる。そこで,橋渡し推論は予期的推論に比べ,常にアクセス可能性が高い状態から推論を生成することになるので,より活性化が大きいと考えられる。 これらの仮定による予測を検証するために,プライミング技法による実験的研究を行った。その1つは,橋渡し推論を,直前の文章から予期される内容と一致するか否かによって,2つのサブタイプに分けて比較するものであったアクセス可能性の仮定によれば,予期一致橋渡し推論は予期からのアクヤス可能性の向上による影響を蒙るため,そのような影響を受けない予期不一致橋渡し推論よりも強く活性すると予想される。予期的推論と橋渡し推論が別の処理メカニズムによって生成されるとする立場からはこの違いは予想されない。実験の結果は,予期一致橋渡し推論の方が活性化が大きいことを示した。他の実験の結果も,アクセス可能性の仮定による予測が適切であることを示唆した。
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Research Products
(1 results)