2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07437
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 等 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 肝細胞 / 発生 / 毛細胆管膜領域 / オンコスタチンM / 細胞外マトリクス / aminopeptidase N / Ras |
Research Abstract |
私は、BC領域形成機構の解明を目的とし、マウス胎児由来初代肝細胞を用いて実験を行った。まず、BC領域に発現することが知られているDipeptidyl peptidase IV、Multi-drug resistant protein-2およびAminopeptidase N (APN)の抗体を用いた免疫細胞染色を行い、各々のタンパクの局在を観察した。オンコスタチンM (OSM)添加培養後、マトリゲル(細胞外マトリクス)を培養液中に加えたときに3種類のタンパク全てが局在化を示した。BC構造とBasolateral領域を隔てるタイト結合を形成するタンパクの一つZO-1と共染色したところ、この3種類のタンパクはZO-1によって囲まれる領域内に局在していた。さらに、機能的なBC構造が形成されているかを調べるため、蛍光物質を結合させた有機酸を細胞に取り込ませてその排出を観察したところ、OSMと細胞外マトリクス両者を添加したときにのみ排出活性が見られた。 次に、このBC領域の形成がどのようなシグナル因子を介して行われるかを様々な阻害剤を用いて調べた。OSMが活性化するシグナル経路の一つであるRasの阻害剤(L744832)を培養の最初から添加するとAPNの局在が抑えられた。しかしながら、L744832を細胞外マトリクスの添加前に加えても阻害は起こらなかった。また、Ras経路の活性を調節するといわれているProtein kinase Cの阻害剤(H-89)によりAPNの局在が消失し、Rasの下流分子の一つMEKの阻害剤(PD98059)を細胞外マトリクス添加前に加えることでAPNの局在部位数が増加することを見いだした。これらの結果から、初期段階にRas経路は活性化され、細胞外マトリクス添加後はRas経路が抑えられることがBC領域形成に必要だという可能性が考えられる。 今年度の研究により、胎児肝発生時のBC領域形成機構を解析するシステムが確立され、その過程におけるRas経路の重要性を示唆する結果を得ることができた。
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