2003 Fiscal Year Annual Research Report
葉緑体とミトコンドリアの分裂装置による分裂・増殖機構の超分子細胞学的解析
Project/Area Number |
02J07498
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
宮城島 進也 立教大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 葉緑体分裂 / ミトコンドリア分裂 / 細胞内共生 / FtsZ / ダイナミン / 分裂リング / 単細胞紅藻 / オルガネラ |
Research Abstract |
葉緑体とミトコンドリアはそれぞれ,シアノバクテリアとアルファプロテオバクテリアの細胞内共生によって誕生したと考えられている.本研究の目的は,これらオルガネラの真核細胞内での分裂・増殖機構を解明することである. これまでの研究の結果から,葉緑体と原始的なミトコンドリアの分裂には,共生バクテリア由来のFtsZタンパク質と宿主真核細胞由来のダイナミンタンパク質,構成成分不明のオルガネラ分裂リングが関与することがわかっている(Miyagishima et al.,2003).本年度は,バクテリアの分裂において中心的な働きをするFtsZタンパク質が細胞内共生前後でどのような進化を遂げたのかということについて解析を行った. 原始紅藻シアニディオシゾンと珪藻(紅藻の二次共生によって誕生した)タラシオシラの核ゲノム全塩基配列から,それぞれ四つずつのFtsZ遺伝子を同定し,既知のFtsZタンパク質を含めて分子系統解析を行った.その結果,(1)細胞内共生後に緑色植物系統と紅色植物系統でそれぞれ葉緑体型のFtsZ遺伝子重複が起き,新たに誕生したFtsZタンパク質のC末端配列が除去されたこと,(2)同様に紅藻の二時共生後,紅藻由来の葉緑体型FtsZが重複を起こし,新規FtsZタンパク質のC末端配列が除去されたこと、(3)少なくとも原始紅藻シアニディオシゾンと細胞性粘菌が二種類のミトコンドリア型FtsZタンパク質を持ち,片方においてC末端配列が除去されていることが明らかとなった. これらの結果から,重複とC末端削除による新たなFtsZタンパク質の獲得が葉緑体の一次,二次共生,ミトコンドリアの一次共生に共通に起きていることがわかった.この結果は,葉緑体とミトコンドリアの分裂がFtsZ,ダイナミン,オルガネラ分裂リングという非常に良く似た機構で行われるというこれまでの研究によって提唱された仮説に,どちらのオルガネラにも二種類のFtsZが関わるという要素を付け加えることになる.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Miyagishima, S., et al.: "An evolutionary puzzle : chloroplast and mitochondrial division rings."Trends in Plant Science. 8. 432-438 (2003)
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[Publications] Miyagishima, S., et al.: "Two types of FtsZ proteins for mitochondria and red-lineage chloroplasts : the duplication of FtsZ is implicated in endosymbiosis."Journal of Molecular Evolution. 58. 291-303 (2004)