2002 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳動物初期胚における細胞周期制御機構に関する研究
Project/Area Number |
02J07661
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩森 巨樹 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | マウス初期胚 / RB / 細胞周期 / マイクロインジェクション |
Research Abstract |
本研究ではマウス初期発生過程における細胞周期制御機構、特に初期胚に特異的に見られるG1期の短縮に注目して、それを引き起こす分子機構を解明することを目的とした。G1期での短縮は分裂期(M期)終了後、DNA合成期(S期)への誘導シグナルが早期に活性化されるために引き起こされるのではないかとの仮説を立て、S期進行に重要な因子であるRBに着目した。まず、初期発生におけるRB、およびRBと関連するE2F1、サイクリンEの発現を調べた。RT-PCR法によるmRNAレベルでの解析ではRBは未受精卵で発現しており、その後、受精24時間後の2細胞期では著しく減少し、36時間後の2細胞期後期から胚盤胞期までほとんど発現が見られず、胚盤胞期中期から再び増加するという動態を示した。さらに、ウエスタンブロツトや免疫染色といったタンパク質レベルでも同様の結果が得られた。また、E2F1については初期発生の間常に発現が確認され、サイクリンEは2細胞期から発現し始め、桑実胚期をピークとして発現が上昇し、その後、徐々に発現が減少するというRBとは完全に逆の相関を示した。この結果で得られたRBの発現消失がG1期短縮の原因であるかどうか検討することを目的として、初期胚に対するRBの過剰発現を試みた。その結果、RBを発現させると、対照胚に対して4細胞期までは正常に発生したが、その後、桑実胚以降への発生が著しく抑制された。また、2細胞期の片方の胚にのみRBを発現させたところRBを発現した割球のみが4細胞期の状態で発生を停止した。この停止胚の細胞周期をBrdUの取り込みにより調べたところ、RBを発現したものは4細胞期のG1期で停止していた。以上の結果から、マウスの4細胞期以降の初期胚ではRBの発現が消失してしまうために、S期への進行が早期に活性化され、G1期が短縮するという可能性が強く示唆された。
|
Research Products
(1 results)