2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J09051
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
御手洗 菜美子 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 粉体 / 非平衡統計物理 / 流体 |
Research Abstract |
粉体は巨視的な粒子の集まりで、粒子の運動への熱揺らぎの影響は無視でき、粒子間相互作用は散逸的である。粉体の流れは、分子性の流体とは全く違う振る舞いを示すことが知られている。例えば斜面上の粉体は、傾斜角が小さければ静止しているが、臨界角を超えると流れ出す。傾斜角が小さいときに実現する比較的高密度で遅い流れと、十分大きな傾斜角で実現する低密度で速い流れとでは、その性質が大きく異なる。前者は相互作用に摩擦が重要な役割を果たすために摩擦流(frictional flow)、後者は衝突が支配的であるために衝突流(collisional flow)とよばれている。今回、この2つの流れの違いを、分子動力学法を用いた数値実験により具体的に調べた。 粉体の分子動力学シミュレーションで広く用いられている離散要素法は、粒子間の有限時間の接触を許す軟体球(Soft Sphere)モデルである。このモデルにおいて、粒子間の反発係数を一定に保ったまま、粒子の硬さのパラメータを大きくする剛体極限での、定常流の性質の変化を調べ、上述の2つの流れが定性的に異なる振る舞いを示すことを見出した。衝突流の剛体極限においては、粒子間の単位時間当たりの衝突回数は一定で、単位時間当たりの接触時間の割合はゼロに収束する。これは、剛体極限での粒子間相互作用が2体衝突のみで表されるということである。しかし、摩擦流においては、衝突回数は粒子の硬さのパラメータに対して冪的な発散を示した。また、それぞれの衝突を2体衝突と考えて衝突回数から見積もった接触時間はゼロに収束するが、重力と多体効果による残りの接触時間が、剛体極限でも有限に残るという結果が得られた。 この結果は、高密度な流れのモデル化の際には、粒子の有限時間の接触の効果を無視できない可能性を示唆するものである。
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Research Products
(1 results)