2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J09637
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
江草 宏 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 成人幹細胞 / 分化制御機構 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
今年度の研究は研究実施計画に基づき主にUCLAワイントロープ再建生体工学センターにて行われた。我々は申請書に記載したように、「成人幹細胞は未分化の段階で多様な遺伝子を発現しており、ある組織への分化過程では、その組織に特異的な遺伝子群が結果的に優位な発現を示すように、それ以外の遺伝子の発現を抑制するための抑制機構が存在する」といった仮説に基づいて研究を進めている。従来、骨髄由来間葉系幹細胞は中胚葉系の組織である骨・軟骨・脂肪に分化することが良く知られていたが、最近これらの細胞が外胚葉系の組織である神経へも分化することが示唆されている。そこで我々は、仮説に示した抑制機構は、間葉系幹細胞を中胚葉系に誘導した場合よりも、胚葉を越えて外胚葉系の組織に誘導した場合のほうがより顕著に働くと考え、成人幹細胞の中胚葉および外胚葉への分化モデルを確立した。これにあたり、我々は成体マウスの骨髄由来幹細胞を骨および神経へ分化誘導し、それぞれの組織特異的な遺伝子および蛋白の発現を検出することにより異なる胚葉系組織への分化能を確認した。また、神経への分化誘導の際には、細胞膜電流のパッチクランプ記録により電位依存的イオンチャンネルの存在を示し、機能的にも神経細胞に分化していることを示した(国際歯科学会で発表予定)。このモデルを用いて成体幹細胞を骨に分化誘導した場合の神経特異的な遺伝子・蛋白の発現を検討した結果、これらの発現は分化誘導前の細胞にあるレベルですでに存在しており、発現レベルは骨分化の進展に伴い減少した。同様に、細胞を神経に分化誘導した場合には、骨特異的遺伝子の発現は減少した。これらの結果は我々の仮説に示した抑制機構の存在をサポートするものと考えられる。現在、確立した分化モデルを用いて成体幹細胞の分化過程における広範囲にわたる遺伝子の発現抑制をDNAマイクロアレイにより観察している。
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