2002 Fiscal Year Annual Research Report
DNAのメチル化とクロマチン動態に基づく神経幹細胞の運命決定機構の解明
Project/Area Number |
02J10019
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
波平 昌一 熊本大学, 発生医学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 脳神経系 / 細胞系譜 / 発生 / 分化 / ニューロン / アストロサイト / DNAメチル |
Research Abstract |
本年度は、マウス未分化神経上皮細胞が発生段階によりどの細胞系譜に運命付けられているかを検討し、それに伴うDNAのメチル化状態とクロマチン構造の変化を確認した。その結果、胎性中期の未分化神経上皮細胞はニューロンへの分化のみが見られるのに対し、胎性後期の細胞ではニューロンのみではなくアストロサイトへの分化能も有していることが確認された。またそれに伴い、アストロサイト特異的タンパク質GFAPをコードする遺伝子の転写調節領域のメチル化頻度が発生段階依存的に変化することが確認された。さらに、このメチル化頻度の変化は、DNAメチル化転移酵素の発現の変化やゲノム全体の低メチル化状態によるものではないことを確認し、発現に必須な領域に特異的であることを見い出した。加えて、GFAPのみならず、幼弱なアストロサイトに特異的に発現するS100βタンパク質においても、発生段階に伴い、領域特異的に転写調節領域のメチル化の頻度が変化することが確認され、それに伴うタンパク質発現パターンの変化もみられた。これらの結果は、胎生期の哺乳類の脳の発生において、未分化神経幹細胞の分化系譜の決定機構に領域特異的なDNAのメチル化が深く関わっていることを示唆している。これらの成果は本年度の日本分子生物学会年会で発表された。さらに上記の成果をもとに、DNAメチル化の変化に伴うクロマチン構造の変化も解析中であり、今後さらに神経幹細胞の分化系譜決定機構においてエピジェネティックな細胞内在性機構の変化の重要性が解明されることが期待できる。
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Research Products
(1 results)