2003 Fiscal Year Annual Research Report
DNAのメチル化とクロマチン動態に基づく神経幹細胞の運命決定機構の解明
Project/Area Number |
02J10019
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
波平 昌一 熊本大学, 発生医学研究センター・転写制御分野, 特別研究員(PD)
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Keywords | 脳神経系 / 細胞系譜 / 発生 / 分化 / ニューロン / アストロサイト / DNAメチル化 |
Research Abstract |
本年度は、マウス未分化神経上皮細胞が発生段階によりどの細胞系譜に運命付けられているかを検討し、それに伴うDNAのメチル化状態とクロマチン構造の変化を確認した。今回我々は、アストロサイト分化制御機構におけるDNAメチル化の重要性をさらに詳細に検討するために、幼若なアストロサイト特異的遺伝子S100βの発現調節へのDNAメチル化の関与を検討した。その結果、S100βにも発生段階依存的な発現が観察され、さらにS100βの転写調節領域内の特異的なCpG配列のメチル化頻度が発生の進行に伴い激減することが見られた。加えて、特異的なCpG配列がメチル化を受けていない胎生後期(14日目)の神経上皮細胞において、サイトカイン刺激によりS100βの転写調節領域のヒストンはアセチル化され、S100βの発現も見られるが、メチル化を受けている胎生中期(11日目)ではこのアセチル化が阻害され、発現も誘導されないことが観察された。また、胎生中期から後期にかけてS100β転写調節領域へのメチル化CpG結合蛋白質MeCP2の結合量の減少が見られた。これらの結果は、神経幹細胞が発生の進行に伴いアストロサイトへと分化していく過程にDNAの脱メチル化が必須であるということを示唆している。また、脱メチル化に伴うクロマチン動態の変化もアストロサイト分化制御に重要であることも示唆している。これらの成果は本年度の日本分子生物学会年会で発表され、現在、学術誌に投稿中である。上記の成果をもとに、今後さらに神経幹細胞の分化系譜決定機構においてエピジェネティツクな細胞内在性機構の変化の重要性を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(1 results)