2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J61448
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
橘 理恵子 愛媛大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高血圧 / 動脈硬化 / 多因子疾患 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
高血圧症は、最も有病率の高い疾患であり、動脈硬化を介して、脳血管障害や心筋梗塞の危険因子となる。高血圧症は多因子疾患であり、環境要因及び遺伝子要因の影響を受ける。本研究は、愛媛県下における大規模かつ臨床データの整った集団を対象に、既知及び未知の動脈硬化・高血圧関連候補遺伝子を統計学的に選別し、その発症機構に対する遺伝因子と環境因子との相互作用を明らかにすることを目的としている。本年度は、既に収集した5つのサブグループからなる約6000人の臨床データ及び遺伝子の解析を行った。 Paraoxonase(PON)はHDLに含まれるエステラーゼであり、LDL酸化抑制作用を有することから、血清中のPON濃度の減少は動脈硬化のリスクを増大させると考えられている。一方、アラキドン酸の非酵素的過酸化反応産物である尿中8-イソプロスタンは、生体内の酸化ストレスのマーカーであり、喫煙者で有意に高いことが報告されている。そこで、PON遺伝子多型と尿中8-イソプロスタンとの関連について、喫煙の影響を加味して検討を行った。サブグループの一つにおいて、インフォームドコンセントの得られた一般地域住民(50歳以上)、231名を対象とし、末梢血からゲノムDNAを抽出した。PON1遺伝子プロモーター及びエクソン領域の多型(-907C/G、-107C/T、Leu55Met、Gln192Arg)、PON2遺伝子のエクソン領域の多型(Cys311Ser)について、PON1 -107C/T、Leu55MetはPCR-RFLP法により、それ以外の多型はTaqMan PCR法によりタイピングを行った。8-イソプロスタンの尿中濃度(pg/mg creatinine)は、EIA法により測定した。各遺伝子多型の頻度は、Hardy-Weinbergの法則に従っていた。-907C/G多型と-107C/T多型に強い連鎖不平衡が認められた。喫煙者群(n=26)の8-イソプロスタン濃度は、非喫煙者群(n=205)に対して、有意に高値であった(喫煙者群:433.7±207.2,非喫煙者群:290.5±134.9,p<0.001)。PON1-107C/T遺伝子多型(CC(23%):CT(55%):TT(22%))と8-イソプロスタン濃度に有意な関連は認められなかったが(CC:323.4±161.8,CT:294.8±132.2,TT:319.2±182.7,p=0.41)、対象を喫煙で2分割すると、喫煙者のTT多型において8-イソプロスタン濃度が有意に高値であった(ANCOVA:F[1,227]=8.44,p=0.004)。8-イソプロスタンを従属変数とした一般線形分析において、PON1-107C/T遺伝子多型と喫煙の交互作用は、血中LDLコレステロール濃度と共に尿中8-イソプロスタン濃度の独立した規定因子であることが示された。以上の結果から喫煙者においてPON1遺伝子プロモーター領域の-107TT多型(または-907C/G多型)は、酸化ストレスの有意なリスクであることが示唆された
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 橘理恵子, 田原康玄, 近藤郁子, 三木哲郎: "遺伝子多型(SNP)と多因子疾患のオーダーメイド治療"Heart View. 7(12). 16-17 (2003)
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[Publications] 小原克彦, 田原康玄, 橘理恵子, 名倉潤, 三木哲郎: "頸動脈硬化の総括的検討-JSHIPP研究について"愛媛医学. 22(3). 227-230 (2003)