2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J01951
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
松本 均 独立行政法人農業生物資源研究所, 発生分化研究グループ・成長制御研究チーム, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | アワヨトウ / セラチア菌 / 成長阻害ペプチド(GBP) / ドーパミン / 殺虫タンパク質 / メタロプロテアーゼ / アポトーシス |
Research Abstract |
本研究では、昆虫の日和見感染菌であるセラチア菌が分泌するメタロプロテアーゼに起因する殺虫メカニズムについて研究を推進している。これまでの研究からこのメタロプロテアーゼが宿主昆虫アワヨトウの体液ドーパミン濃度の上昇をもたらし、体液中のドーパミンが脳内へ流入し、脳・神経細胞のアポトーシスを誘導していることが明らかとなっている。また、ドーパミン合成経路の酵素の一つであるチロシン水酸化酵素を阻害することにより、アワヨトウの生存期間が大幅に延びることも示されている。これらのことから、ドーパミンはメタロプロテアーゼによる殺虫機構に重要な因子の一つであることが明らかだが、メタロプロテアーゼによるドーパミン合成・分泌誘導機構は明らかではない。 そこで、ドーパミン上昇の機構を明らかにする目的で、メタロプロテアーゼ注射後の体液ドーパミン量の変化を測定した。ドーパミン量は注射直後の変化では緩やかであったが、約2時間後から急激に上昇した。このことから、メタロプロテアーゼとドーパミン上昇の間には少なくとも一つの因子が関与しているものと考えられた。この因子として、類似のドーパミン上昇を示す成長阻害ペプチド(Growth-blocking peptide, GBP)が考えられる。GBPは多機能性の昆虫サイトカインで、最近、L-ドーパ脱炭酸酵素(dopa decarboxylase, DDC)の発現及びドーパミンの分泌を誘導することが明らかとされた。このことからも、メタロプロテアーゼによるドーパミン分泌がGBPを介して起きている可能性がある。そこで、メタロプロテアーゼ投与後のGBP前駆体およびGBPの変化をウェスタン解析ならびにELISA法によって調べた。メタロプロテアーゼ投与後、GBPの前駆体は徐々に減少し、GBPが増加していることが明らかとなった。以上のことから、メタロプロテアーゼによる殺虫機構はGBPの活性化を介したドーパミン分泌誘導が関与していることが示唆された。
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