2003 Fiscal Year Annual Research Report
生体内高分子内の電子、プロトン移動に関する理論的研究
Project/Area Number |
03J02969
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 千草 神戸大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 電子移動 / タンパク質 / 電子状態計算 / 分子動力学法 / イオン移動 / Jarzynskiの式 / Steered MD |
Research Abstract |
本研究では、最も基本的な化学、生体内反応である電子、プロトン移動反応の分子論的機構を明らかにすることを目的としている。第1年目である本年は、1、タンパク質のダイナミックスがどのように電子移動に影響を与えるのか、2、イオンとタンパク質の結合部位との結合がどのように起こるのかという2つの視点から研究を行った。 タンパク質の電子移動に関して、我々は生体内電子移動の速度を示す指標として、この電子の受容体、供与体を結ぶ生体内高分子のGreen's関数を取り上げた。Green's関数は生体内高分子の電子状態計算より導出されるが、多くの生体内高分子は非常に大きく、全系の電子状態計算は計算機資源的に非常に困難である。そのため、我々は反応の性質を失うことなく、比較的、容易に計算する手法の開発を行った。また、タンパク質のダイナミックスを調べるために、分子動力学法もあわせて行った。これらの手法をいくつかの電子移動反応が見られるタンパク質に適用させ、水素結合や側鎖の運動が電子移動の径路やその状態を変化させている事を明らかにした。 また、現在ではさらに大規模なタンパク質に適応できる手法の開発を押し進めている。 また一方では、タンパク質の大規模な運動、溶媒である水分子の揺らぎ、そして電荷移動が互いにどのように影響し合い、化学反応を引き起こしているのかを詳細に調べるために、そのモデル系としてタンパク質の結合部位へのイオンの移動を取り上げた。我々は、水分子を含めた大規模な分子動力学法計算を行った。それによりタンパク質の大規模な構造変化が、強い電荷を持つイオン、または溶媒である水の揺らぎによりどのように行われているのかについて知見を得た。また、Jarzynskiの式を用いたSteered MDを行い、自由エネルギーの解析を行い、この反応機構の解明を目指している。
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Research Products
(1 results)