2004 Fiscal Year Annual Research Report
生体内高分子内の電子、プロトン移動に関する理論的研究
Project/Area Number |
03J02969
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 千草 神戸大学, 理学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 電子移動反応 / 電子状態計算 / 分子動力学法 / タンパク質 / カルシウム結合反応 |
Research Abstract |
本研究では、最も基本的な化学、生体内反応である電子、プロトン移動反応の分子論的機構を明らかにすることを目的としている。第2年目である本年は、1.タンパク質のダイナミックスがどのように電子移動に影響を与えるのか、2.イオンとタンパク質の結合部位との結合がどのように起こるのかという2つの視点から研究をさらに行い、発展させた。 タンパク質の電子移動に関して、前年度に開発した手法をいくつかの電子移動タンパク質で適用し、タンパク質の電子移動反応についてさらに進んだ解析を行った。また、タンパク質のダイナミックスを調べるために、分子動力学法もあわせて行った。得られた各トラジェクトリに対して電子状態計算を行った。電子を橋渡しするタンパク質がその立体構造によって、移動速度が異なることは実験より良く知られている。本研究では立体構造の異なる複数のタンパク質に本研究で開発した手法を用いる事により、実験結果の再現を可能にし、また、さらなる機構の解明を可能にした。現在、この研究で得られた結果に関して、論文をまとめている最中であり、近日投稿予定である。 また、タンパク質の大規模な運動、溶媒である水分子の揺らぎ、そして電荷移動が互いにどのように影響し合い、化学反応を引き起こしているのかを詳細に調べるために、そのモデル系としてカルシウム結合タンパク質であるカルモジュリンのカルシウム結合部位へのカルシウムイオンの結合反応を取り上げた。本研究では(1)結合反応に沿って溶媒である水分子、結合部位、それぞれがカルシウムへの相互作用をどのように変化させるのか、(2)結合部位のゆらぎがどのように変化するのかに特に注目し、解析を行った。
|