2003 Fiscal Year Annual Research Report
フランスの「貧者の地域通貨アソシエーション」における贈与交換
Project/Area Number |
03J03656
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 理 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フランス / 贈与 / 民族誌 / 経済人類学 / 地域通貨 / アソシエーション |
Research Abstract |
本年度の研究として、現地調査にるデータ収集を行い、データ分析と理論的検討にもとづく知見を論文・研究として発表した。 文献調査によって問題を明確化させたうえで、9月から10月にシャトー・アルヌー・サン・トーバン市での現地調査を行った。地域通貨アソシエーション機能の仕方、参加者による活動の意味づけ、および背景となる社会的経済的状況についてのデータを収集した。帰国後にデータを整理し、データベースを作成した。 このデータベースをもとに、参加者が地域通貨を用いた交換をどのように理解しているかについて分析を行い、その結果を大阪大学21世紀COEプログラムのシンポジウム「トランスナショナリティ研究の地平」におけるワークショップで発表した(11月28日於大阪大学)。さらに、年間を通して行なってきた贈与に関する理論的検討の成果を組み込み、論文として発表した(研究発表欄参照)。この論文では、地域通貨による交換は、贈与交換としても商品交換としても理解できるという両義性を持っていることを明らかにし、さらにこの両義性が組織内の紛争の原因となりうることを示した。地域通貨システムを、従来見られた形式的分析にとどまらずに、民族誌データに基づいて人類学的に分析した点が、この論文の特色である。 つづいて、同じくデータベースをもとに、アソシエーション内での食料資源の流通とその意味付けを分析した。分析の結果を、京都大学人文科学研究所共同研究班「フェティシズム研究の射程」研究会(2月2日)、および特定領域研究資源人類学総括班主催のワークショップ「資源と人間」(2月22日)で発表し、検討を進めた。これらの発表では、現金で十分な食糧を購入できない貧困層に地域通貨を用いて食料を分配する活動が、さまざまに意味づけられることを明らかにした。発表の場で行なった他の研究者との討議の成果を踏まえ、現在論文としてまとめている。
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Research Products
(1 results)