2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J05095
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桑田 和正 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 大偏差原理 / 拡散過程 / 確率線積分 / 多様体 / 長時間漸近挙動 / ランダムカレント |
Research Abstract |
コンパクトリーマン多様体上の拡散過程を、各一次微分形式に対して、拡散過程の経路に沿った確率線積分を対応させるランダムな汎函数とみなし、長時間漸近挙動を解析した。特に、汎函数の空間での大偏差原理の形で問題を定式化し、その成立を示した。更に、漸近挙動を記述する量である速度関数の具体的表示を与えた。 調和微分形式の確率線積分は、可換な被覆変換群を持つ被覆多様体上にリフトされた拡散過程の挙動と密接に関係している。我々の結果では、解析対象を調和微分形式の族に限らず確率線積分全てに拡げ、それらの挙動を同時に解析している。そのため、上記大偏差原理の速度関数は、調和微分形式の線積分に対する解析だけでは捉えきれなかった、リフトされた拡散過程の、より微細な情報を含んでいると考えられる。今回得た結果を深化発展させれば、リフトされた拡散過程の長時間漸近挙動に幾何的構造が与える影響について、新たな知見が得られるものと期待できる。 これらの結果は現在論文を投稿中である。また、横浜、金沢、福岡の各地で開催された研究集会で研究成果を報告した。 一方、東京大学の楠岡成雄氏、慶應大学の田村要造氏との共同研究で、今回得られた枠組みでの大偏差原理が、微分形式の微分可能性の条件を弱めた場合にも成立することを明らかにした。この結果については、現在論文を執筆中である。 また、今回の結果の前段階として、よりhomogenizationの影響の強いスケール条件下での大偏差原理の結果を、雑誌"Stochastic processes and their applications"に発表した。 さらに、大阪大学の稲浜譲氏、京都大学の白井慎一氏との共同研究で、四元数双曲型空間上のシュレディンガー作用素のスペクトルの分布に関する漸近挙動を、確率論的手法を用いて解析した。この結果は、現在論文を投稿中である。
|
Research Products
(1 results)