2004 Fiscal Year Annual Research Report
権利主張と他者への敬意-敬意を涵養し、敬意によって実現される権利-
Project/Area Number |
03J05446
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吾妻 聡 京都大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 権利批判と権利再構築 / 新しい社会運動 / 批判法学 / ロベルト・M・アンガー / ラディカル・デモクラシー / 規範理論 / 障害学・障害者の社会運動 / モダニズム / ポスト・モダニズム |
Research Abstract |
日本における障害者の社会運動および障害学に特に関心を払いつつ、これら実践に応答し得る権利概念・制度的構成の再構築を目論もうとする本研究であるが、本年度においては、こうした具体的な法・政治・社会現象に対してより説得的な説明を加えるための、あるいは、より説得的な規範的提言を抽出するための、より一般的な理論的枠組みが獲得されねばならないという課題設定において、やや抽象度の高い次元において研究が進められた。 権利制度・ディスコースに関する論争については、批判法学による執拗なまでの脱構築主義的な権利批判の実践と、これへの再批判としての批判的人種理論等のマイノリティ側による権利擁護の実践とを一瞥する事を通して、「批判」と「構築」という一般的学的態度につき本研究は、いわゆるポスト・モダニズムの言説(脱構築的「批判」)が流布する学的状況において尚も-あるいはそれゆえにこそ-、後者(「構築」)の学的実践・態度に身を置くものであることを改めて確認した。 一方、社会理論に関しては、ロベルト・M・アンガーの社会構造変革に関する理論を参照点の中心とし、彼が提示する、より平等化され民主化された社会・制度的構成の実現、それを通した人間の可能性の十全なる開花というラディカルなプロジェクトに共感を寄せつつ研究が進められた。本研究の主張は、こうしたラディカルな民主化というアンガーが提示するあるべき社会についての規範的なビジョンが、広く「新しい社会運動」と呼ばれる市民社会変革の動きの中で芽吹いているというものである。学的実践が何事かを成しえるとするならば、こうした社会おける萌芽的実践を正当化し得る説得的・普遍的な言説を産出し、もってこれら実践に応答すること、あるいはそれと呼応することによって常に既に既存の枠組みを批判的に吟味し続けることであるように思われる。
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Research Products
(3 results)