2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
03J06987
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小笠原 史樹 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トマス・アクィナス / ビュリダン / スコラ哲学 / 中世論理学 / 創造論 / 神の全能性 / パリ大学学芸学部 / 新プラトン主義 |
Research Abstract |
キリスト教的創造論と新プラトン主義的流出論との比較検討を課題として研究を進めた結果、前者を代表するトマス・アクィナスの創造論に関して、(1)神そのものを絶対的に考察する視点のみならず、被造物そのものをも絶対的に考察する視点が存在し、創造可能性の概念は前者と後者とによって二重に規定されている、(2)創造論はそのような二つの絶対性の関係如何を問うものとして構成されている、(3)被造物そのものを絶対的に考察する視点が設定されていることに即して、可能性の概念は行為者の能力とは無関係なものとして規定されている、という三つの結論が得られた。このような三つの結論を哲学史的に検討した結果、現段階での仮説として、(1)創造可能性を規定する際に用いられる「矛盾律」について、前期スコラ哲学から後期スコラ哲学にかけて、矛盾律の範囲と神の全能性の範囲との関係は、巨視的に整理するならば、「神の全能性の範囲が矛盾律の範囲を超える」という理解から「矛盾律の範囲が神の全能性の範囲を超える」という理解へと展開していく傾向がある、(2)創造可能性の概念が論理学における諸理論を哲学的背景としている一方、論理学も創造論を形而上学的背景としており、両者の間には相関関係がある、という二つの整理が得られた。特に後者の整理に関して、十四世紀パリ大学学芸学部における論理学を検討した結果、ビュリダンの論理学においては、神による創造可能性と相関する形で命題の意味や真理が規定されている、ということが明らかとなった。
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