2004 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・ディアスポラの地政学と「非合法」移民政策の国際比較研究
Project/Area Number |
03J07535
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
挽地 康彦 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 福祉国家 / 移民政策 / 社会政策 / 出入国管理 / 植民地主義 / 「非合法」移民 / 社会的排除 / グローバリゼーション |
Research Abstract |
本年度は、主に(1)日本と英国における1980年代以降の移民政策と社会政策との関係を合法/非合法、包摂/排除の観点から比較分析するのと同時に、(2)戦後日本における旧植民地出身者のディアスポラとしての性格と入国管理政策の歴史について検討した。(1)と(2)を平行して考察することで、かつて植民地支配を経験したホスト国における旧植民地出身者への社会的処遇と戦後の移民政策との関係が、移民をマイノリティ化する構造的制約や「まなざし」の問題を考察するにあたって相互に重要な論点を提供することがわかった。 (1)については、日本・英国に米国を加えた比較分析を継続中であるが、(2)の研究成果は、論文「大村収容所の社会史(1):占領期の出入国管理とポスト植民地主義」(『西日本社会学会年報』No.3,2005)としてまとめた。ここでは、先行研究・史資料・統計資料などの文献調査、不法入国者等の収容所が存在した(する)場所へのフィールドワーク、および聞き取り調査などを通して、以下の論点について検討した。すなわち、戦後日本の草創期の入国管理制度、在日コリアンに代表される旧植民地出身者に対する管理政策、混乱した東アジアの地政学的状況の中で日本に「密航」した在日コリアンの動態、「在日」化したコリアンと「不法入国者」として強制送還されたコリアンとの差異、密航朝鮮人を集中的に収容した施設の実態などである。 得られた知見を整理すると、旧植民地出身者への戦後の入国管理政策は、戦前の警察=入管という構図を踏襲した植民地主義の遺制であったこと。そうした政策が、国境をまたぐ植民地時代の民衆の生活圏を分断する方向に働いたこと。入管という国家主権の眼差しと植民地主義の眼差しの交錯が、政策決定の場を支配し、その力学が「不法入国者」(密航者)への処遇に象徴的に現れていたこと、などが挙げられる。
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Research Products
(1 results)