2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ菌感染を起点とする胃癌発症の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
03J10023
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堤 良平 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 微生物 / ヘリコバクター・ピロリ / シグナル伝達 / 癌 |
Research Abstract |
Helicobacter pylori(H.pylori)の感染は様々な胃粘膜病変の原因とされ、その中でも病原因子cagA遺伝子陽性株の感染は疫学的研究より胃癌発症との強い相関が知られている。cagA遺伝子産物CagAは胃上皮細胞に直接進入する菌体由来のタンパクで、細胞内での生物学的役割が非常に注目されている。CagAは細胞内でチロシンリン酸化を受け、細胞内チロシンホスファターゼSHP-2とリン酸化依存的に複合体を形成、活性化する。このCagAによるSHP-2を介したシグナル伝達異常により胃上皮由来AGS細胞においてhummingbird phenotypeと呼ばれる特殊な細胞形態が誘導される。申請者はこの細胞形態変化を指標としてCagAによりシグナル伝達異常が惹起される細胞内シグナル経路の解明を目指し、昨年度までにCagAによる細胞形態変化の誘導は、Ras、PI3K、p38、JNKには非依存的である一方、MEK-Erk経路に依存していることを明らかとした。本年度はCagAによるシグナル伝達異常の細胞接着系への影響を重点的に検討し、その結果、CagAはSHP-2の活性化を介して、細胞接着の制御に重要な役割を果たしているチロシンキナーゼFAKの脱リン酸化を亢進することが明らかとなった。さらに、脱リン酸化に伴うFAKキナーゼ活性の不活化はhummingbird phenotypeの誘導に際し重要な役割を担っていることを明らかにした。結果の詳細については現在投稿中である。
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Research Products
(3 results)